おはようございます。
昨日からの雨で東京は急激に気温が下がり、今朝は傘にコート姿の人々も見かけるようになりました。一気に真夏から中秋まで2カ月ほど季節が進んだような感覚で、急激な気温の変化に体内の調整機能はもちろん、衣服の選択すら判断に困るほどの状況で、気持ちも含めて変化に追いついていけないようなお天気が続いています。特に高齢者や基礎疾患のある方は、より注意が必要で、身体の調整役である自律神経が変化についてゆけずに、失調症による免疫の低下、感染症や持病の悪化につながることも懸念されます。普段よりきめ細かい体調管理に配慮が必要です。
さて、本日のテーマである脳腸相関ですが、腸は第二の脳と呼ばれるくらい、腸にはたくさんの神経細胞が集中しており、迷走神経とも呼ばれる副交感神経系の自律神経によって、脳と腸は直接的に情報をやり取りする仕組みがあることがわかっています。この迷走神経を介した脳と腸の神経連関が脳腸相関と呼ばれるもので、脳と腸はつねに密接に連携して活動しているということです。わかりやすい例でいえば、見知らぬ土地に旅行したり、仕事や学校で嫌なことがあると、下痢したり腹痛を起こすことがありますが、これはストレスを感じた脳からの信号が腸に伝わり、腸の活動に影響を与えていることが一因なのです。
この脳腸相関において、現在注目されているのがうつ病などの精神疾患との関係性です。世界中で進められているさまざまな研究によって、うつ病の患者では自律神経の乱れに起因して、認知機能の障害ならびに睡眠障害や食欲障害などの症状が起こります。さらに腸管バリア機能の低下が起こり、体内に侵入した細菌と闘うべく各所に炎症が起こっていることを示す、サイトカインやCRPと呼ばれる炎症物質が血中で増加することまで確認されています。うつ病という精神疾患によって、太い神経でつながっている腸がさまざまな障害を起こすということです。その結果は当然腸内の環境にも大きく影響を及ぼし、腸内フローラにも好ましくない変化が見られます。
好ましくない腸内フローラの変化とは、善玉菌と呼ばれるビフィズス菌や乳酸菌が減少し、通常はみられない菌種の異常繁殖が起こるため、善玉菌が作る乳酸、酪酸といった短鎖脂肪酸などの有用な物質が作られず、逆に悪玉菌が有害な物質や毒素を腸内に振りまいてしまう状況です。こうなると腸内環境が一気に悪化してしまい、うつ病に加えて不眠、認知症、糖尿病、高血圧、肥満、免疫疾患や感染症の重症化など、全身のあらゆる不調につながってゆくことは、ご存じのとおりです。つまりうつ病を起点として、腸内環境が悪化し、これが全身のさまざまな疾患に発展してゆくという仕組みが脳腸相関の負の側面として存在しているということです。
では、その逆はどうなのか。これが新しいアプローチとして世界が注目している部分です。つまり腸内環境を積極的に改善すれば、うつ病を改善できるのではないか。腸内環境が良くなれば、脳腸相関によって精神的な疾患も改善を見せるのではないかという発想です。そしてこの発想から現在多くの研究者がうつ病や認知症などの症状改善に取り組んでおり、一部は非常に有効であるという結果を臨床試験などで発表しているのです。その具体的な内容については、明日また詳しくお話ししたいと思います。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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