NO.263 10月17日【金】=Tレグ(制御性T細胞)の話②=

おはようございます。
昨日からの続きです。今年のノーベル生理学・医学賞は、制御性T細胞(Tレグ)の発見と研究に寄与した、大阪大学の坂口特任教授ら3名に授与されることになりましたが、その発見は、それまでの免疫学の常識を覆す大発見であり、当初は異端児あつかいされていた時期もあったといいます。そして坂口氏の最初の研究から30年が経過した現在、ようやくその臨床応用のための研究が急速に進みだしている状況です。

まずは、Tレグを用いた臨床試験が進んでいる自己免疫疾患の治療として、1型糖尿病疾患、全身性エリテマトーデス、そしてアレルギー疾患への応用がありました。さらにがん治療においては、Tレグを抗体などを使って、局所的に減少させたり除去することで、がん細胞への免疫応答を強化する取り組みが進んでいることも昨日お話しました。

つぎに応用が期待されているのは移植医療の分野で、腎臓や造血幹細胞の移植後の拒絶反応(GVHD)を防ぐ目的で、Tレグ投与の臨床試験が進んでいます。英国キングス・カレッジ・ロンドンのグループは腎移植での試験を実施しており、免疫抑制薬の減量が主な焦点となっています。またアレルギーでは、Tレグ増加を誘導する薬剤が開発されているといいます。IL-2改変薬のほか、アレルゲン特異的Tレグ誘導も研究されています。ただし効果に個人差が大きく、適切なバイオマーカー探索が課題となっているようです。

アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病では、脳や脊髄で慢性的な炎症が進行します。対症療法ではありますが、Tレグはそれを抑制して神経細胞を保護する新戦略として注目されているといいます。米国国立衛生研究所(NIH)はALS患者に対するTレグ投与試験での安全性を報告しており、研究が継続されています。

まだまだ発展途上のTレグ細胞治療ですが、実用化に向けた共通課題として、Tレグの大量かつ安定的な製造があります。Tレグは環境により性質が変わりやすいため、安定性を保つ技術も必要で、日本では中外製薬がiPS細胞由来のTレグの開発に取り組んでいるといいます。Tレグ療法は、免疫制御の根本を変える可能性を秘めながら、細胞の安定性・機能保持という課題に阻まれてきました。しかしながら近年、そのボトルネックを超える研究が相次ぎ、iPS細胞由来Tレグなど再生医療との融合も見え始めています。坂口氏の発見から30年。Tレグは今、ようやく基礎から臨床へ、本格的な「免疫制御医療」の時代が拓かれようとしている中で、今回の受賞に輝いたといえます。今後の研究にぜひ期待したいですね。

今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

コメント

  1. ピンピンキラリ塩谷勇人 より:

    早くTレグの恩恵を受ける時代が来て欲しいです。

    それまでは、我々が恩恵を受けるのは、サステナ以外無いので、自信を持って日本中のすべての方々に伝えていきたいと思います。