NO.174 4月15日【火】=再生医療とiPS細胞=

おはようございます。

今月13日に大阪・関西万博が開幕しました。初日から雨模様ながら14万人を超える来場者で、かなりの混雑混乱があったとニュースなどでは取り上げられていました。今回の万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」は、まさに高齢化が進む世界において、単なる長寿社会を目指すのではなく、長く生きることが当たり前になった時代において、すべてのいのちが輝くように、豊かで幸せな人生を私たち一人一人がどのように描くのか、さまざまなアイデアとテクノロジーの博覧会といってもよいのかもしれません。

そして今回個人的に注目したいのは、やはりパソナグループパビリオンで展示されている iPS細胞による人工心臓です。手塚治虫氏のアニメキャラとして有名な天才外科医ブラックジャックの手によって生まれ変わった「ネオ鉄腕アトム」が、未来医療の世界をナビゲートしてくれるという設定で、そのハイライトが培養液中で、実際に鼓動する iPS心臓です。本当に拍動している様子は、ぜひ生で見てみたいものです。

iPS心臓自体は、まだ実用化の手前ですが、同じ iPS細胞を使用した心筋シートは、すでに実用化の段階にあり、大阪大学のグループが2020年に世界で初めて患者への移植手術に成功しています。まさに人工の心臓パーツを実際に弱った心臓に移植するという再生医療の最先端を iPS細胞が可能にしているのです。

iPS細胞とは、2006年に京都大学の山中教授によって作製された新しいタイプの多能性幹細胞です。「人工多能性幹細胞(Induced pluripotent stem cell)」を略してiPS細胞と呼んでおり、皮膚や血液などさまざまな細胞に分化する能力を持つと言われています。体にあるすべての細胞は受精卵が元になっていますが、通常は特定の細胞に分化すると元の状態に戻ることはありません。iPS細胞とは、体の細胞に特定の遺伝子を導入し、受精卵に近い状態に戻すことで、さまざまな細胞に分化する能力と無限に増殖する能力を持たせた細胞と言われています。

iPS細胞と似た機能をもつ技術としてES細胞というのもあります。。両者は性質が極めて近い多能性幹細胞であり、あらゆる細胞に分化する能力と高い増殖能力を持ちます。こうした細胞を使った治療には他人の細胞を用いる他家治療と、自身の細胞を用いる自家治療があります。ES細胞は不妊治療などで使用されなかった受精卵から作製するため、倫理的な問題が残るうえに治療に用いる場合、すべて他家治療となります。他家治療では、免疫拒絶のリスクを抑えるため、免疫抑制剤の投与が必要になります。一方でiPS細胞は、皮膚や血液など採取しやすい細胞から作製することが可能なため、他家治療も自家治療も行うことができます。患者さん自身の皮膚などの細胞から作製して自家治療に使う場合、拒絶反応が起こりにくいメリットがあります。

2012年に京都大学山中伸弥教授らがノーベル賞を受賞した、日本発の先端医療技術 iPS細胞は、その後世界中で実用化研究が進められており、心臓病以外でも網膜の再生や、関節軟骨の再生、脳神経疾患、そして卵巣がん、乳がん、骨髄性白血病などのがん治療においても、今後実用化が進んでゆくとみられており、まさに再生医療の切り札になると考えられています。これからは臓器移植の分野はもちろん、あらゆる疾病治療に利用が可能であり、いずれは私たちの身体も、病気や老化で傷んだ部分をまるで車のパーツを取り換えるように交換することができるようになるのかも知れません。iPS細胞によってそんな未来が見えてきます。

今日も一日頑張ってゆきましょう。

よろしくお願いします。

コメント

  1. 阿部敏行 より:

    IPSはパーキンソン病の回復にも資すると医師から聞いたことがあります。脳幹の一部を正常なものに書き換えコピーすることで一気にオセロゲームの逆転勝ちのような状況を作れるそうです。
    これが本当に実現すれば夢のようです。
    しかしこれまでお聞きしたセミナーを思い起こすと自律的に健康を保とうとする力はまた別のところにあるような気がしています。
    今日もサステナの力を借りてそのあたり鍛えておこうと思います。