おはようございます。
今年のノーベル賞受賞者の発表が先週からニュースで話題になっていますが、今回も日本からの受賞がありました。日本被団協=日本原水爆被害者団体協議会という団体が、被爆者の立場から核兵器廃絶を訴え、長年にわたり核なき平和な世界を実現するために努力し、核兵器が二度と使用されてはならないことを自らの証言によって示してきたことが評価され受賞に至りました。世界で唯一の被爆国である日本にしかできない偉業であると誇らしく思うと同時に、ここまでの大変なご苦労と努力に頭が下がる思いが致します。
そしてもう一つ注目したのは、AI(人工知能)に関連する受賞が目立ったことです。ノーベル物理学賞は今日のAI技術発展を担った中核とも言える「機械学習」の基礎に関わったアメリカプリンストン大学のジョン・ホップフィールド教授と、カナダトロント大学のジェフリー・ヒントン教授に贈られました。そしてノーベル化学賞もやはりAIを活用して、たんぱく質の設計や立体構造の予測に成功した研究者たちに贈られました。アメリカワシントン大学のデイビッド・ベーカー教授は、AIを使って全く新しいたんぱく質の設計に成功、またグーグルのグループ会社で、イギリスディープマインド社のデミス・ハサビスCEOとジョン・ジャンパー氏は、AIを使って高精度のたんぱく質立体構造の予測システムの開発に成功したのです。
AI(人工知能)は非常に新しい分野であり、ここ数年で急速に進化し発達の著しい分野でもあります。元来ノーベル賞には、こうした情報処理に関わる分野は、どのカテゴリーで評価すべきなのか議論もありました。さらにノーベル賞の受賞は長年の貢献度合いが評価される部分があり、どの分野もたくさんの受賞候補が次こそはと、順番待ち状態とも言われています。受賞根拠とされる研究や成果から何年も経過して表彰されることも珍しくありません。しかし、AIはとても新しい技術であり、しかしながら世界中の多くの場面で利用実用が進んでおり、私たちの生活にすでに大きな影響と恩恵を与えています。こうした変革に対し、ノーベル賞の選考委員会もいち早く対応すべきと考えた結果の受賞だったのかも知れません。特にAI開発技術をノーベル物理学賞で評価したのは、多くの関係者にとっても新鮮な驚きになったようです。
ノーベル化学賞の対象となったたんぱく質の設計と、その立体構造を予測するAI技術ですが、これもさまざまな分野に応用が期待される画期的でしかも基盤となる技術とされています。ウイルスや細菌から植物、動物に至るまで、すべての生物の生命活動はたんぱく質によって制御されていると言っても過言ではありません。現にあらゆる生物の設計図である遺伝子の本体(DNAやRNA)はまさにたんぱく質を作るための設計図なのですから。遺伝子の配列そのものが、アミノ酸の配列を示しており、その設計図通りにアミノ酸を繋いでゆくと、何千何万種類ものたんぱく質が出来上がるのです。そしてあるたんぱく質は生物の血や肉となり体を構成し、あるたんぱく質は酵素となり体内の代謝をを担い、あるたんぱく質は抗体や生理活性物質となって外敵から身を守る防衛隊となり、たんぱく質こそが命を紡いでいる本体といっても過言ではないのです。
そのたんぱく質は、非常の多種多様な構造を持っており、その構造、特に立体構造によってさまざまな機能と役割を果たしています。例えば、新型コロナワクチンの開発において注目されたウイルスのスパイクたんぱくというは記憶に新しいところですが、ウイルスの表面にある突起物を形成しているたんぱく質で、その立体構造がカギの役割を持ち、人間の細胞に侵入することで感染がおこります。つまりスパイクたんぱくという独特のたんぱく質の立体構造がカギになっているということです。そしてワクチンはこのカギにピッタリあう構造をもつ抗体を作り出すことで、ウイルスが細胞に感染する前に抗体がそのカギにカバーを付ける形で覆ってしまうので、感染を未然に防いでくれるのです。
ウイルスのみならず、病原性の細菌であったり、またがん細胞であったり、私たちの生命を脅かす侵入者や毒素は、多くの場合特有のたんぱく質を持っていますので、そのたんぱく質が悪さをしないように抑え込むには、その立体構造を割り出し、それをオス型としてそこにピッタリとはまることのできるメス型のたんぱく質を作り出せば、相手を無力化することができるというわけです。これが抗体医薬品やがん分子標的薬の原理でもあります。またがんや感染症に限らず、身体のなかの様々な機能を調整しているたんぱく質を、人工的に設計し作り出すことが出来れば、それ自身がやはり新しい医薬品として多くの難病の解決につながる可能性があります。私たちのサステナも、この技術を利用すればさらに効率よく牛さんたちに免疫ミルクをつくってもらえるかも知れません。そんな可能性が広がる画期的なノーベル化学賞であったと思います。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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