おはようございます。
昨日からの続きです。未来の革新的エネルギーと期待される核融合発電が、夢物語ではなく実現可能な産業技術として、いま劇的に進歩している段階に入りました。契機となったのは、2022年の米国ローレンス・リバモア国立研究所(NIF)の実証実験でした。すでに核融合の実験はさまざまな研究機関で行われていましたが、NIFの実験ではじめて投入したレーザーエネルギーよりも、核融合で発生したエネルギーの方が多いという状態を達成した歴史的瞬間でした。これが核融合技術の実用化に向けたスタートになりました。
しかし、核融合を発生させるためには、3つの条件を成立させる必要があります。これを「ローソン条件」と呼んでいますが、まず1億度以上の超高温状態をつくらなければなりません。原子核同士は反発力を持ちますので、これを乗り越えて衝突させるには、この超高温が必要なのです。そして原子核同士が衝突する確率を上げるために十分な高密度状態をつくります。さらに反応が連鎖的に続くよう、熱が逃げない状態を維持し閉じ込める仕組みが必要になります。
この1億度という超高温状態をつくり、これを維持することが最も難関でしたが、現在までにいくつかの方式が開発されています。1億度という超高温はあらゆる物質を溶かしてしまうため、物理的な容器で閉じ込めることは不可能です。そこで特殊な方法で空中に浮かせた状態で保持する方法が考えられました。前述のNIFは強力なレーザーを一斉に照射・圧縮し、瞬発的に核融合を起こす方式で、慣性閉じ込め方式と呼ばれる方法を確立しました。しかし、継続的に核融合を起こせるわけではなく一瞬の勝負と言えます。そこで考案されたのが磁場閉じ込め方式と呼ばれる技術で、真空容器の周囲に強力なコイルを配置し、磁力線で高温のプラズマを閉じ込める方式です。日本の研究機関などは、さらにコイル自体をらせん状にねじることでより長時間の運転を可能にする技術を開発しています。
まさに、世界がしのぎを削る競争状態にある核融合開発ですが、商用炉が稼働するのは早くて2030年代後半、一般に普及するのは2050年頃と言われています。実用化に向けた道のりはまだまだ始まったばかりと言え、解決すべき問題、課題はたくさんあります。しかし、わずか1グラムの燃料(重水素)から、石油8トンに相当するエネルギーが得られるという核融合発電は、化石燃料を完全に代替し脱炭素社会を実現する大きな切り札として世界が期待する、まさにエネルギー革命といえる技術です。
1億度という超高温プラズマの制御、燃料となる重水素とリチウムの安全で安定的な供給体制、そして安全の要となる核融合に耐える構造材料や資材の開発が急がれています。さらに最も大きなハードルは経済性です。核融合発電所の建設には巨額の投資が必要で、国際熱核融合実験炉(ITER)はその実験炉の建設だけで3兆円を費やしています。商用炉の建設にはさらに巨額の投資が必要と言われ、経済性をどこまで確保できるかが今後の大きな課題といわれています。
また、ドラマではありませんが、核融合の実用化に向けた重要技術が一部の国や企業に独占されるような事態になると、世界のエネルギー需給に大きな影響を及ぼすことは間違いなく、特に石油や天然ガスの産出国の経済は大きなダメージを受けかねません。場合によっては国際紛争の火種になる可能性もあり、その面でも早い段階での国際協力の調整が必要と考えられています。
夢のエネルギー技術、核融合発電が平和裏に実現され、世界を今よりももっと豊かで住みやすい場所に変えてくれることを祈りながら、その実用化に期待したいと思います。
今日も一日頑張ってゆきましょう。
よろしくお願いします。

コメント