おはようございます。
米国ハーバード大学の進化生物学者のダニエル・リーバーマンは、その著書『人体 600万年史』で、「ミスマッチ病(mismatch diseases)」という言葉を提唱しています。これは人類が何百万年という時間をかけて進化した環境と、この数百年で急激に変化した現代社会との「不一致(ミスマッチ)」によって生じる病気を指すものであると説明しています。
人類は長い間、狩猟採集生活のなかで、少ないカロリー摂取、活発な身体活動、不安定な食料供給を前提に進化してきました。ところが農耕の開始や産業革命以降、食料は高カロリーのものが安定供給され、身体活動は著しく減少しました。飢餓に備えるための脂肪蓄積は、かつては生存に有利だったのですが、現代では、脂肪が炎症や過剰なホルモン分泌を刺激し、生活習慣病やがんを促す「リスク因子」に転じてしまいました。この「進化にもとづく設計」と「現代の環境」のギャップこそが、肥満、糖尿病、心血管疾患、そして、それらと関連性のある、がんなどの慢性疾患の温床になっているといいます。
リーバーマンが「ミスマッチ病」と名づけたのは、このギャップを単に「生活習慣の乱れ」とするのではなく「進化の歴史から必然的に生まれた齟齬(そご)」として捉えるためであります。現代人が肥満や高血圧を抱えるのは「意志が弱いから」ではありません。飢餓に備え脂肪を蓄えやすく設計された身体が、飽食・低活動の社会に放り込まれた結果にほかならないのです。リーバーマンはこれを「進化の皮肉」と表現しています。この視点を持つことで、体によい習慣を形成しなおすことは、人類進化の文脈から見れば「環境の再調整」であることが理解できます。私たちは進化の歴史を背負いながら、現代に適応する新しい習慣を築かねばならないのです。だから、習慣を変えるのは容易ではありません。しかし、決して不可能ではないといいます。
英国の作家で医師でもあったサミュエル・スマイルズは、その著書「SELF-HELP」(自助論)で、「天は自ら助くる者を助く」という精神を広めています。これは産業革命期の英国で多くの人々を勇気づけ、日本でも明治維新期に紹介され、福沢諭吉らを通じて「努力と習慣の大切さ」が広められる原動力になったといわれています。スマイルズの言葉でキーとなるのは「用意周到な訓練」でありました。よい習慣を育むには、意志の力だけでは難しい。そのための環境を整え、行為が繰り返されるよう設計することが重要であるというのです。
では、「用意周到な訓練」とは、どのような訓練なのでしょうか。明日も、このお話続けてみたいと思います。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

コメント