NO.303 1月9日【金】=アレルギーの科学②=

おはようございます。
昨日からの続きです。私たちをさまざまな病原菌や外敵から守る仕組みである免疫システムが、時に誤作動を起こし暴走することで起こるのが、アレルギーという厄介な病気ですが、日本を含め世界での患者数は増加の一途をたどっています。昨日はそのアレルギー疾患のなかで、アトピー性皮膚炎について述べてきましたが、最新の研究でその原因遺伝子の一部が発見され、新たな治療法の確立に向けて研究開発が進んでいるとお伝えしました。

そしてアトピー性皮膚炎と並んでもう一つ多くの現代人を悩ませているアレルギー疾患が花粉症です。花粉症もやはり免疫システムの暴走によって、鼻粘膜や目の結膜に炎症が起こることで、QOLの低下を招きます。原因は病原体でもない花粉の成分に繰り返し晒されることで、免疫システムが誤作動を起こし、これを有害な外敵として認識してしまうことから始まります。一旦外敵として認識された抗原は、免疫システムによって対抗する抗体(IgE抗体)が作られます。そしてこの抗体と免疫細胞(マスト細胞)が結合し、次なる抗原の侵入に備える警備隊が編成されると、花粉症の完成です。次に花粉の侵入があれば、この警備隊が速やかに出動し、抗原である花粉に反応し、免疫細胞からヒスタミンなどの化学物質を放出することで、粘膜の粘液を増やし、鼻水や涙とともに花粉を洗い流そうとする一連の反応が花粉症の症状として起きてしまうというわけです。

私たちのカラダにとって、有害ではない花粉を外敵として認識してしまうことが、誤作動の原因ですが、この誤作動を起きにくくする治療法が研究され、一部実用化されているのが減感作療法(免疫療法)と呼ばれる治療法です。体を徐々に抗原に慣れさせ、花粉に耐性をつけることで、アレルギー反応を起こしにくい体質に変えていくというものです。注射による皮下免疫療法や舌下液による免疫療法がありますが、いずれも長期の治療が必要で、副作用もあるため課題も多いのが現状です。

しかし近年注目されつつあるのが、スギ花粉米という新しいアプローチです。メカニズムは免疫療法と同じで、簡単に言うと「スギ花粉の成分を含んだ米」を食べることで、体に花粉が入ったと錯覚させようというものです。遺伝子組み換え技術を利用したスギ花粉米は、米粒の中に花粉そのものが入っているわけではなく、スギ花粉として認識されるのに必要な抗原タンパク質の一部が含まれているお米というわけです。

スギ花粉米のターゲットは腸の免疫です。食べ物という異物に日々接する消化管の粘膜は、感染防御の最前線。小腸は広げるとその表面積はテニスコートにも匹敵するといわれますが、それほど広く外界と接している腸は、まさに生体内で最大の免疫装置です。しかし食物タンパク質にいちいち反応していては栄養吸収の妨げになります。そのため腸管では、食物タンパク質に対して抗体の産生が抑制されるなど、免疫が反応しない仕組み(経口免疫寛容)があると考えられています。

しかし花粉症克服のためとはいえ、アレルギーの原因物質をあえて摂取することに抵抗を感じる人もいるでしょう。実際、既存の免疫療法にはリスクが伴います。そこでスギ花粉米では、天然の抗原そのものではなく、遺伝子組換えによって抗原タンパク質の構造を改変することで「抗原と同じように認識されるが、ショック症状は引き起こさない」絶妙な設計がなされています。従来の免疫療法に比べて副作用の点で安全性も高く、しかも比較的短い期間で免疫寛容が誘導できる可能性があるスギ花粉米ですが、現在農研機構などによって実用化に向けた臨床試験がすすめられているといいます。

このスギ花粉米が商品化されれば、これは薬なのか、あるいは食品なのかという議論も起こりそうですが、花粉症の治療改善が期待できる、新しい機能性食品として実用化されることを期待したいですね。

今日も一日サステナ飲んで頑張りましょう。
よろしくお願いします。

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