おはようございます。
iPS細胞の発見から、再生医療の目覚ましい発展によってさまざまな難病に対する治療の道が拓けつつあります。10月に閉幕を迎える関西万博でも、iPS細胞を利用した人工心臓の展示が多くの人々の注目を集めています。また治療法がないとされているパーキンソン病に対しても、iPS細胞を使ってドパミン神経細胞を再生すると言った根治的治療法の開発が進んでいます。iPS細胞で心臓を始めさまざまな臓器の細胞を再生し、これを移植することで治療が可能となれば、多くの難病が解決できそうですが、しかしながら認知症だけはそう簡単には行かないようです。
認知症は65歳を超えた高齢者の2割が罹患するという予測もあり、日本でもその患者数は700万人にのぼります。また過去10年で患者数は1.5倍に増加しており、高齢化によって今後ますます加速することが懸念されている難病の一つです。認知症の中では、アルツハイマー病が占める割合が7割近くと最も高いのですが、アルツハイマー病の再生医療は簡単ではないと京都大学の山中教授はいいます。この病気は大脳全体が萎縮していきますから、それを補うために、もし外から脳の神経細胞を大量に移植してしまうと、これまでの記憶を失ってしまう可能性があります。新しくつくられた回路が、もともとあった回路を侵食してしまって、自分が誰だかわからないような状態になりかねないといいます。
iPS細胞でも難しい認知症の治療ですが、ようやく有効な治療薬が登場しつつあります。それが抗体医薬です。2021年に最初に登場したのは、日本の製薬企業エーザイが開発したアデュカヌマブという抗体医薬でした。アデュカヌマブは、アミロイドβに対する抗体です。簡単にいえば、抗体がアミロイドβにくっつくことでミクログリアによって除去されやすくするのです。アデュカヌマブが登場したころは、その画期的な効果に世界は大興奮しました。アデュカヌマブを1年間投与することで、アミロイドβの蓄積が大幅に減っています。しかし大規模臨床試験を行うと、その効果は極めて限定的であることがわかってきました。そのためアメリカでは条件付き承認にとどまりました。
そこで、さらに病態の解明と新しい抗体の探索が続けられ、2022年9月、新たなアミロイドβに対する抗体、レカネマブに有意なアルツハイマー病の進行抑制効果が見られたと発表され、2023年にはアメリカで完全承認されました。アメリカのイーライリリー社が開発しているドナネマブも、アミロイドβの除去に加えて認知機能の低下抑制効果も期待されています。
アミロイドβは、もとになる大きなタンパク質が分解酵素によって切断されて生じます。このときアルツハイマー病の脳では、切断末端がピログルタミル化という修飾を受けます。このピログルタミル化アミロイドβが凝集の核となると考えられています。ドナネマブは、ピログルタミル化アミロイドβに結合する抗体なのです。アミロイドβの蓄積に続いて、タウというタンパク質も蓄積していきます。タウに対する抗体も治験が行われています。このように抗体も進化を続けていますし、RNA創薬も参入しており、今後さらに新しい治療薬が生み出されると期待されます。
私たちが毎日飲んでいるサステナも、その有効成分に26種類の抗体が含まれていることはご存じのとおりです。抗体はうまく活用することで、私たちの身体を蝕むさまざまな病原体や有害物質を処理し、取り除いてくれる頼もしい存在です。そして今まさに最先端の医療分野で抗体が医薬品として利用されつつあることは、とても頼もしいことでもあります。
今日もサステナ飲んで頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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