NO.190 5月20日【火】=日本の強みは経済複雑性=

おはようございます。
トランプ関税によって世界の貿易事情が大混乱を起こしています。注目された米中の高関税の応酬は、一旦落ち着きを取り戻したようですが、それでも米国の相互関税の90日の猶予期間は刻々とその期限が近づいており、未だに国別の個別交渉で合意を得たのは英国だけです。先頭バッターだった日本はもちろん、多くの国々が出口の見えない交渉の進捗にやきもきしている状態と言えます。しかし市民生活レベルで考えれば、一番の影響を受けているのは、米国民であろうと思います。インフレで物価が高騰する中、トランプ関税により中国、東南アジア、そしておとなりのカナダやメキシコからの輸入品がさらに値上げされたり、関税が高すぎて輸入がストップ、品目によっては市場から商品が消えてしまう事態も起きていると言います。特に市民生活に直結している、衣料品や食品、汎用的な工業製品はこうした国からの輸入がほとんどで、米国内生産はコストが合わず衰退傾向が目立つ分野でもあります。当然ながら、米国民からのトランプ関税に対する反発は日に日に大きくなっており、トランプ大統領も一度振り上げたコブシの降ろしどころを探りかねているように見えます。

日本は政府を上げて、米国との関税交渉に臨んでいますが、今回一連のトランプ関税騒動によって改めて見えてきた日本の強みがあります。この数年、日本は円安の影響で特に輸入貿易についてはさまざまな苦難を経験してきました。一方で輸出の面では記録的な好業績を上げた企業も多数あります。特に為替については過去の極端な円高時代から現在の円安まで、大きな幅での変化を経験する中で、その都度生き残りをかけて知恵を絞り変化に耐える体力を身につけてきたのが、いま日本の強みになっていると考えます。日本は資源の少ない分、貿易によって成り立つ貿易立国として発展をしてきた国です。ただモノをつくって売るだけでは、大きな人口を抱え大規模な生産力と消費力をもつ中国やインドに簡単に追いつかれ、もう追い越されている分野も多いのが事実です。しかし、それでも日本が世界のなかで埋没していくのではなく、確固たる地位と立場を維持できるその源泉となる強みがあると言います。

それは、日本の「経済複雑性」であると、米カリフォルニア大学サンディエゴ校教授のウリケ・シェーデ氏は指摘します。経済複雑性とは、ハーバード大学が世界各国の生産的知識をランキングしたものと言われ、2つの指標に基づいています。第一は、その国の輸出品の「多様性」と「複雑性」です。第二は、どれだけ多くの国でその製品をつくれるかという「偏在性」です。例えばシャツのように単純な製品は複雑性が低く、多くの国で生産可能です。他方、高度な機械や素材は非常に複雑で、生産できる国はごくわずかです。「経済複雑性の高い」国は、それだけで高度で専門的な技術や人材が豊富で、非常に複雑かつ希少で他の追随を許さない製品を生産できることを示しています。

1995年から2020年のランキングの推移を見ると、米国は、9位から12位に後退しています。他方、韓国は21位から4位に急上昇し、中国も、46位から17位に上昇。ベトナムも、107位から52位に浮上しています。最も驚くべきなのは、日本はこの間、ずっと1位だったことです。これはなぜか。マクロ経済的にはさまざまな問題を抱えていたなかで、ミクロ経済的な企業レベルでは、日本は長い間、特定の技術分野で中核的な強みを持ち続けているということなのです。

日本企業の強みを示すもう一つのデータがあります。計1094品目(自動車、ロボット、医療機器、事務機器など「最終製品」812品目と、半導体、電池、先端材料など「キーテクノロジー製品」282品目)別に、「世界市場規模」と「日本企業の合計市場シェア」を調査したNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の報告です。これによると、2020年と2021年に日本がシェア100%の製品は58品目もありました。シェア90%以上は94品目、シェア75%以上は162品目に達しています。

日本が大切にすべき強みが少し見えてきた気がしませんか。これは、私たちの日本が次の50年、いや100年を世界の中でどのように生き残り、そして地球の未来に貢献できるのか、まずは自分たちの強みを良く知り、そして自信と希望をしっかりと持ち直す意味で、すべての日本人が認識しておくべきとことだと思います。明日もこのお話、もう少し続けたいと思います。

今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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