おはようございます。
私たちの腸内には、1000種類以上の細菌が存在し、その総数は500兆個にも及ぶと言われています。もちろんその種類や数は個人によって、また体調によっても千変万化していると言われていますが、私たちのカラダを構成する細胞の数が37兆個と言われていますから、それに比べても途方もない数であることは間違いありません。腸内フローラ(腸内マイクロバイオータ)と呼ばれるこれら微生物の世界は、腸という空間に広がる小宇宙と言ってもいいかも知れません。そしてその小宇宙は、これだけ科学が進んだ現在においても、ほんの一部しか解明されていない多くの謎を秘めた未知の世界と言われています。1000種類、500兆個というのも、単なる推測値に過ぎず、誰もその本当の数や姿を確定し確認した人はいないのです。
過去100年以上にわたって腸内フローラは医学、自然科学の分野で研究が進められ、特に日本はいわゆる発酵食品の研究が古くから盛んに行われてきたこともあり、現在も世界をリードする多くの研究成果を誇っている分野でもあります。清酒や味噌、醤油と言った伝統産業はもとより、乳酸菌、ビフィズス菌と言った生きた細菌を善玉菌と位置づけ、これらを多量に含む食品や飲料を健康志向食品として研究開発し、世界に普及してきた歴史があります。ヤクルトに代表される乳酸菌飲料やヨーグルト、こうしたカラダに良い作用を持つ細菌を善玉菌と位置づけ、これを積極的に食品として摂取することで、健康維持増進を図るという非常に単純明快なコンセプトが受けて、たくさんの製品が開発され市場に出回っています。そして多くの食品メーカーや研究者が善玉菌の研究開発にしのぎを削り、さまざまなその効用が発見され、解明されてきました。
しかしながら、これまで見えてきたのは善玉菌の効用が中心であり、しかもその種類は乳酸菌とビフィズス菌にほぼ絞られており、1000種類以上もあると言われている腸内フローラの、残り998種類以上については圧倒的に研究成果が乏しい、あるいは解っていないと言っても過言ではない状況です。また善玉菌がいるなら、その反対に悪玉菌がいるはずで、こちらは私たちに害を及ぼす、病原菌のグループと言われていますが、これも実態が把握できているのはごく一部で、その存在自体が私たちの健康を蝕むような強い病原菌は、健康な状態の私たちのカラダにはなかなか侵入できないので、ほぼ存在できないはずなのです。つまり少しぐらいいても大きな悪さはしないけれど、増えると病気を起こすような細菌を悪玉菌と分類していて、大腸菌などがその例として挙げられます。こうして1000種類以上の細菌群を善玉、悪玉と区別しているわけですが、その実像はほとんど見えておらず、結局よくわからない細菌がたくさん残ってしまったというのが実状だと思います。
ところが、善玉菌と悪玉菌という分類で考えた時に、場合によって私たちの健康に役立つ働きをしたり、一方で害になりそうな行動をとったりする二面性を持つ細菌も現れたりします。つまり善玉と悪玉の両方の要素を持つ細菌もいたりするのです。これを第三のグループとして日和見菌と名付けていますが、元来善と悪の基準は、私たち人間に役立つか、害になるかで判断しているわけで、微生物側から考えれば、その個体が生き延びるための活動はひとつではなく、さまざまな生命活動を行うのは当然で、これを善か悪かの二元論で考えること自体ナンセンスなのかもしれません。善玉、悪玉、日和見菌という捉え方は、解りやすい反面、本当の実態を誤解してしまう可能性があるのです。
1000種類、500兆個の世界がどのように私たちの日々の生活に関与しているのか、まったくよく見えなかった時代、もっと言えば乳酸菌とビフィズス菌という善玉菌のヒーローだけを見ていた時代は、善玉、悪玉、日和見菌という捉え方で、十分に事足りたのだと思います。しかしながら、本当の健康、そして本当の腸内フローラと私たちのカラダの関係を解明してゆくためには、1000種類の細菌の個別の働き、さらに私たち人間との共生関係において、どのような相互作用を持っているのか、詳しく検証することが求められています。そしてようやくこの10年で、遺伝子工学などの発展によって、腸という小宇宙の果てしないブラックボックスをひとつひとつ切り崩して行く術を得たと言ってもいいかも知れません。まさに腸内フローラはこれからの研究が大きな成果をもたらしてくれる分野と言えます。そしてサステナの本当の実力が、もっともっと明らかになることを期待しましょう。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。


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