おはようございます。
昨日からの続きです。発酵食品は日本食の伝統として、私たちの豊かな味覚をつくり、世界でも有数の食文化を築く大切な役割を担ってきたことは、周知のとおりです。味噌、醤油、清酒などの発酵食品づくりは、古くから職人技として受け継がれてきた歴史があります。食材を微生物の働きにより発酵させて造られる発酵食品の第一の意義は食品の保存でした。微生物の働きにより有機酸が多量に発生し、食品のpHを下げて酸性にすることで、雑菌の繁殖を抑えて腐敗を防止できることをお話しました。そして多くの乳酸菌の仲間が、その働きを担っていることもお話しました。
発酵によって作られる乳酸や酢酸などの有機酸は、食品中の糖質を微生物が分解することで作られますが、もう一つの大切な栄養素であるタンパク質も発酵によって分解され、アミノ酸などの物質を作り出します。この働きが発酵による食品の保存性改良以上に私たちに大きな恩恵をもたらしてくれるのです。肉や魚などの食品に含まれるたんぱく質は、発酵作用によりアミノ酸などに分解されてゆきます。これは発酵の中でも熟成と呼ばれるプロセスでもあります。タンパク質が微生物によって分解され、アミノ酸になるとさまざまな味覚を生み出します。
タンパク質そのものは卵の白身を想像していただければよくわかりますが、殆んど味を持っていません。しかし発酵によってアミノ酸に分解が進むと、さまざまな味を生み出してくれます。タンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種類ありますが、グリシンやアラニンと言った甘味を持つもの、グルタミン酸に代表される旨味、酸味をもつもの、アルギニンやロイシン、フェニルアラニンなど苦みを持つものなどがあり、これらのアミノ酸が混ざり合って、さまざまな味覚を作り出していると言います。これが熟成による複雑で奥深い味覚の変化をもたらしてくれるのです。味噌も、清酒も、そしてチーズやワインも、微生物発酵による熟成によって、とても複雑で変化に富んだ味わいを醸し出してくれていると言えます。
発酵の第二の意義は、食品のもつ多様で独特の味わいを作り出すことであったのです。肉にしても魚にしても、熟成されることで味わいが深くなり旨味やコクが生まれて美味しさが増すというのが、まさに発酵による変化なのです。しかしながら、タンパク質の分解は、アミノ酸を経て、さらに分解が進むと窒素や硫黄を含む、アミンやアンモニアが発生します。これは非常に強い臭いを発し、食品としては食べられなくなります。同時にこうした物質はpHを上げる作用、つまり塩基性に傾くために、せっかく抑えられていた腐敗菌や病原菌が繁殖しやすい環境をつくってしまいます。つまり熟成が進みすぎると、結局腐敗が始まってしまうということなのです。
発酵と腐敗は、どちらも微生物による食品の分解のプロセスであり、私たちにとってメリットのある場合を発酵、デメリットになる場合を腐敗と呼び分けているに過ぎません。その境界線はある意味紙一重と言えます。微生物をうまく活用し、その働きを制御コントロールすることで、食品を長く保存したり、その旨味やコクを引き出すことでより美味しく頂くことができる、それが発酵食品の意義であり、まさに私たち人類が長い経験と歴史の中から編み出した知恵なのだと思います。
今日も一日サステナ飲んで頑張りましょう。
よろしくお願いします。


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