NO.156 3月11日【火】=ヒートショックプロテイン=

おはようございます。

私たちの身体には、さまざまな外敵やストレスから命を守る仕組みとして、免疫というシステムが24時間体制で機能しています。そしてその免疫システムは、細菌やウイルスと言った体外から侵入しようとする病原体や毒素、体内で発生した腫瘍やガン細胞といった異物などを、適切に処理し無害化して排除してくれる非常に頼もしい身体の防衛隊として日夜働いてくれています。この高度に分業化され、さまざまな脅威に対応して働く免疫システムに加えて、その初動部隊とも位置付けられるのが、ヒートショックプロテインと呼ばれる一連のたんぱく質群です。日本語にすれば熱ショックたんぱく質ということになりますが、私たちの身体を構成するさまざまな細胞のメンテナンスを行っているたんぱく質と考えられています。

その名前の通り、熱を感じると体内に発生するたんぱく質で、熱以外でも化学物質や、虚血などのストレスがかかるとやはり発現することが知られており、私たちの身体の細胞を修復したり、そのダメージを未然に防いだりしてくれる役割を持っていると言われています。私たち人間はもちろんのこと、すべての生物はたんぱく質によって構成され、そのたんぱく質の働きによって生命活動は支えられています。すべての生命の設計図とも言われる遺伝子は、まさにたんぱく質を作るための設計図であることはよくご存じのとおりです。そして何万種類ものたんぱく質が、私たちの身体という工場のなかで、生活に必要なさまざまな物質を合成したり、あるいは分解したりと、多彩な能力を持った作業員として働いてくれているのです。しかしその何万種類もの技能をもつ優秀な作業員としてのたんぱく質にも弱点があります。それは熱や化学物質といったストレスには非常に敏感であるということです。

たんぱく質はとても多才で有能ですが、その多才な能力の秘密はその立体構造にあり、その構造は熱やストレスによって変形しやすいという弱点があります。これがたんぱく質の変性と呼ばれるもので、例えば身近なたんぱく質である卵の白身が、熱によって固まったり、あるいは牛乳のたんぱく質が酸によってドロドロのヨーグルトになったりという変化を起こすのが良い例です。こうなると立体構造が変化してしまうので、本来の生理的な機能が失われてしまうことになります。そこでヒートショックプロテインの登場になります。つまりたんぱく質が変性を起こすような熱や化学的なストレスがかかると、同時にこうしたメンテナンス係のヒートショックプロテインが発動し、変性して働けなくなった作業員としてのたんぱく質の立体構造を応急手当、つまり修復する役割を担っているのです。もちろん修復不能なまで壊れてしまうと、それは病院おくりとなり最終的には解体するしかないのですが、その場合の廃品回収の役割も一部担っていると言われています。

このたんぱく質のメンテナンス係としてのヒートショックプロテインは、私たちの身体において、さまざまなトラブルの初期対応として、事態の悪化を未然に防いでくれる非常に大切な役割を果たしてくれていると言えます。免疫という防衛部隊の本体が動き出す前の、初期消火を含めたメンテナンスを日夜行ってくれていると考えてよいと思います。そしてこのヒートショックプロテインの役割が非常に見直されているのが、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病の治療の分野なのです。特にアルツハイマー型認知症では、アミロイドβやタウタンパクと言った、いわゆる脳内のゴミの蓄積によって神経細胞が破壊されることが発症のメカニズムとされていますが、ヒートショックプロテインの一部がこのタウタンパクの蓄積を防いでいるという研究報告が出てきたのです。こうした体内のゴミ掃除をヒートショックプロテインが促進してくれているとして、その役割を見直すさまざまな研究が進んでいると言います。

では、ヒートショックプロテインをもっと積極的有効的に活用し、日々の健康維持に役立てるには、どのような方法があるのでしょうか。明日はさらにその活用法についてお話したいと思います。

今日も一日頑張って行きましょう。

よろしくお願いします。

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