おはようございます。
いまや国民病とも言われる花粉症ですが、日本人の4割を占めるまでその患者数が増加しています。しかしながら、花粉症という疾患は50年前にはほとんど聞かなかった病気であり、少なくとも一般の人々は気にも留めなかった存在でした。症状としてはアレルギー性の鼻炎や結膜炎をおこし、毎年のようにシーズンになると非常につらい時期を過ごすことになります。いわゆる現代病の一つとして数えられる花粉症ですが、ではなぜこんなに患者が急増したのでしょうか。過去の半世紀に日本は高度成長期を迎え、生活様式の欧米化が進み、環境も大きく変化したことが、要因として影響していることは容易に想像がつきます。しかし、さまざまな変化要素のうちで、何が花粉症の増加に最も大きな影響を与えたのか、東大名誉教授の小柳津広志先生は、1970年代に、その分岐点があったと言います。
アレルギー疾患と言われる、花粉症(アレルギー性鼻炎)、アトピー性皮膚炎、そしてぜん息の有病率の年代別推移を、日本健康増進支援機構が調査していますが、いずれの疾患も1960年ころは2%未満であったのが、1970年代から急激に増加をはじめ、2000年にはぜん息が10%、アトピー性皮膚炎が15%、アレルギー性鼻炎に至っては30%を超えるところまで増加しています。アレルギー性鼻炎はほとんどが花粉症ですが、その有病率は現在国民の4割というのもうなずける数値です。
では、この急増を始めた1970年代にいったい何が起きたのか、小柳津先生は抗生物質を乱用する日本の医療にその原因があると言います。小柳津先生に限らず、抗生物質の使用がアレルギーの原因と主張される専門家は多数おられます。抗生物質の歴史は、1940年代の大戦中に兵士の治療に大量に使用されるようになりましたが、まだまだ価格が高く一般ではなかなか使えませんでした。しかし50年代に入ると、価格も低下し、結核や肺炎などの治療に積極的に使用されるようになりました。特に日本では70年代以降、感染症の治療に抗生物質が大量に投与され、日本の製薬企業はこぞって抗生剤の新薬開発や製造にしのぎを削り、世界にも輸出される製品をたくさん生み出した時期でもあります。
こうした背景も加わり、日本人は一人当たりのクスリの消費量が世界でもトップクラスとなり、クスリ好きの国民性が醸成されて行きますが、見方を変えれば日本人が薬漬けにされてきた歴史でもあります。抗生物質という魔法のクスリは、風邪をひいても、怪我をしても、もちろん手術などの外科治療にも、オールマイティーに処方されるクスリです。その乱用によって耐性菌の問題も発生しますが、そのたびに新薬が登場し、現在もイタチごっこを続けています。抗生物質の乱用がアレルギーの原因となり、花粉症が増えたというのはほぼ間違いありませんが、ではどのような影響を与えたのか、そのあたりを次回は詳しく検証してみたいと思います。
今日も一日頑張って行きましょう。
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