NO.111 12月5日【木】=日本の酪農=

おはようございます。

昨日は先の北海道研修でお世話になった、ありがとう牧場の吉川氏の訃報をお伝えしましたが、ありがとう牧場から広がる新しい放牧酪農のムーブメントが、これからも北海道のみならず各地に伝承されてゆくことを期待したいと思います。スターリジャパンとしても命の贈り物であり、母のめぐみとも言われる本物のミルクの価値を、さらに多くの人々にしっかりと伝えて行きたいと考えています。

今週初めに衆参両院で行われた石破首相の所信表明演説では、地方創生という枠組みの中で次のように述べられました。「農林水産業に携わる方々が安心して再生産でき、食料システム全体が持続的に発展し、活力ある農山漁村を後世へ引き継げるよう、施策を充実・強化します。」しかしながら、酪農業に関しては、日本はかなり危機的な状況に陥っていると言わざるを得ません。農協などの指定団体で受託している酪農家の戸数が2024年10月に初めて1万戸を割り9,960戸となりました。日本の酪農はすでに生産基盤の危機を迎えていると言わざるを得ない状況です。

日本の酪農がなぜこのような状況に陥ったのか、三重苦と言われるその原因を探ってみたいとおもいます。3つの原因とされるのは、生産コスト増、副産物である雄子牛価格の低迷、牛乳・乳製品の消費減による生産抑制です。生産コスト増の中でも、輸入飼料の高騰が昨今の離農・廃業農家の増加に拍車をかけていることは明らかです。円安、原油高、ウクライナ情勢と輸入飼料を高騰させる原因がいくつも重なって、もはや酪農業自体が成り立たなくなっていると言います。6割の酪農家が赤字に陥り、その8割が離農を考えていると直近の調査報告が危機的状況を裏付けています。

一方で、消費者の意識調査によれば、国産牛乳を望む声が高く、国産を飲みたいとする消費者は、「とても思う」が66%、「まあ思う」が32%とほぼ全員が国産牛乳を望んでいる結果となっています。さらに国産酪農家を応援したいかという問いにも「とても思う」が58%、「まあ思う」が39%と、こちらもほぼ全員が支援の意向を示しています。

では、食糧自給の問題解決にもつながる酪農業の振興には何が必要なのかを考えてみたいと思います。三重苦に悩む酪農家の3つの原因は、どれも酪農家が主体的に経営努力するによって改善が図れるレベルではないというのが、困難を極めていますが、それでもできることはあると思います。その大きなヒントが、北海道のありがとう牧場にあると考えます。ありがとう牧場をはじめ、足寄町が推進する新しい放牧酪農の農家は、この難しい時代においても多くが安定して黒字経営を続けており、円安や物価高騰と言った経済環境の変化にも対応して来ています。

すぐに思いつくのは、飼料コストです。放牧酪農は輸入に依存する配合飼料を使用していません。したがって飼料コストが極端に低いため、その分原価が低くなり利益を生みやすいコスト構造になっています。当然牛舎も配合飼料に関わる設備も必要ありませんし、また放牧なのでふん尿処理も清掃の設備や機械も必要ないのです。さらにありがとう牧場では、しあわせチーズ工房を敷地内に併設し、生乳からより付加価値の高い最終製品までの製造にかかわることで、生乳販売収入だけに依存しない、自ら付加価値を創造する取り組みも行っています。

こうした経営戦略としての放牧酪農、そして消費者を意識した商品開発の努力によって、厳しいと言われている酪農業に新しい道を切り拓いてきたまさにパイオニアとして、ありがとう牧場の経営スタイルは、多くの酪農家がこれから生き残って行くための一つの答えになっていると思います。私たちスターリジャパンとしても、この新しい酪農スタイルが日本に定着し、少しでも国民の食の安全保障に寄与すること願い、これからも応援して行きたいと思います。

今日も一日頑張って行きましょう。

よろしくお願いします。

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