NO.104 11月21日【木】=103万円の壁再考=

おはようございます。

先週も取り上げたこの話題ですが、与党自民党・公明党、そして国民民主党の3党協議によって、来年度の経済政策に組み込まれ、明日にも閣議決定へと進められることになりました。これにより103万円の壁は引き上げられることが確実となりましたが、果たしてどこまで上がるのか、またその財源はどうするのかといった問題がこれから国会で議論されることになりそうです。

しかし、この収入の壁と言われる問題は、前回もお話しした通り、103万円、106万円、130万円、150万円と一つの壁ではありません。もちろん一つ一つ地道に解決を図ってゆく姿勢は大切であると思いますが、問題の本質がどこにあるのか、法改正に踏み込むのであればもう一度きちんと解決すべき課題を整理しておく必要があるのではと思います。今回の103万円の壁は、報道などで解説されている通り、所得税の基礎控除と扶養控除に関する税制問題に焦点が当てられています。そして議論は基礎控除の上限をどこまで上げるか、その場合財源はどうするかという課題に矮小化されてしまうのではと危惧します。

収入の壁問題は、税制だけでなく社会保障費も大きな壁です。これも合わせて議論する必要があることは、前回130万円の壁としてお話しました。こちらの方がインパクトが大きいことも紹介例を挙げて紹介しましたが、この収入の壁問題の本当の本質は、実は日本の家族制度、世帯の在り方に対する思想が大きく反映していると考えています。そしてこの思想は大昔からの男尊女卑的考え方が、戦後日本の発展を支えた高度成長時代に世帯当たりの収入を最大化する目的と合わさって法制化された、まさに時代遅れの制度になり果てた結果であると言わざるを得ません。

国民民主党が提案する政策の意図は、単純に所得税減税をすることで国民全体の収入を底上げすることであったのかもしれませんが、収入の壁についての議論は、税制と社会保障とそして女性の社会進出に関わる問題、ジェンダーギャップの問題も合わせて考えなければならない問題であると思います。さまざまな基礎控除、扶養控除、そして配偶者控除、さらに健康保険、年金などの社会保険料の徴収方法など、収入を上げるにあたり考慮すべき各種費用は、ことごとく世帯主、つまり大半の家庭においては家長である男性が稼いで家族を養うというスタイルを基本に設計されているということです。つまり世帯主の収入を最大化するように税負担、社会保険料負担などが制度化されきた歴史があるということです。当時は国民全体の収入を増やす方策として有効であったかもしれませんが、今となっては主婦と称して女性を家庭に閉じ込め、労働時間を制約する口実、さらに女性の社会的地位や活躍を妨害する悪法に成り下がっているのではと思います。

夫婦共働きや、独身世帯、母子家庭、独居高齢者など、世帯の在り方はさまざまであり、またその働き方も多様化している現代において、こうした昭和の家族スタイルに根差した社会の制度が時代に即していないことは誰の目にも明らかです。さらに言えば男女雇用機会均等や働き方改革、女性の社会進出推進など、世界に遅れまいと政治はさまざまな政策を打ち出してきましたが、日本はまだまだ基本的な思想が男尊女卑、家父長制の名残をぬぐい切れていません。さまざまなハラスメントや夫婦別姓問題などにも、その根底に流れるものは同じなのではないでしょうか。収入の壁問題を契機に、今一度国民全体で考えなければならない問題だと思います。

今日も一日サステナ飲んで頑張りましょう。

よろしくお願いします。

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