NO.91 10月25日【金】=ミルクの束縛=

おはようございます。

ちょっと変わったネーミングの乳飲料がいま爆発的に売れているそうです。生乳75%使用「ミルクの束縛」ミルクコーヒーという、500mlパック入りのコーヒー入り乳飲料です。現在関東甲信越のファミリーマート限定で販売されており、一部の店舗では売り切れが続出しているほどのヒット商品になっています。価格は215円(税抜き)で、同サイズのコーヒー入り乳飲料と比べれば3~4割高い価格にも関わらず、大人気の商品となっているようです。

製造している老舗メーカーの古谷乳業の開発担当者によれば、生乳をたっぷり使った美味しいコーヒー飲料を作りたかったとのことですが、生乳75%以外には砂糖とコーヒーだけという、原料は自然のものしか使っていないとてもシンプルな製品になっています。こうした乳飲料とされる商品は多くの場合、脱脂粉乳などの輸入による粉末原料が使われることが通常で、一旦乾燥工程を経ることでやはりミルクの風味や味が生乳と比べると変化してしまうのは避けられない部分ではあります。生乳を使うことで、コストは高くなってしまいますが、ミルク本来の風味、おいしさを味わってほしいという作り手の思いが凝縮された製品であり、ネーミングの妙もありますが、やはりその思いの部分が消費者に伝わっているのではと感じます。

ミルクの束縛が注目されている点が、もう一つあります。それは生乳をたっぷり使用することで、国内の酪農家を応援しようという戦略です。古谷乳業に限らず多くの食品メーカーが牛乳を原料に使用した新製品の開発を進めており、牛乳離れが進んでいるといわれる消費者の心をもう一度取り戻そうと官民協力して乳製品の振興に躍起になっているところなのです。コロナ禍で学校給食の需要が大きく落ち込んで以来、日本の酪農畜産業界は大きな転換点を迎えていると言います。

円安による飼料価格の高騰、乳製品市場の停滞を背景に下がり続ける生乳価格など、酪農家にとっては厳しい経営環境が続く中、年間5%以上のペースで酪農家が廃業・離農するケースが続いています。中央酪農会議と呼ばれる業界団体の発表によれば、今年8月時点で全国の生乳受託酪農家は1万戸を割り込んでいるとのことです。ピーク時の1960年ころから比べると40分の1程度まで激減しています。一方で1戸当たりの飼育頭数が増えて大規模化している流れがあり、乳牛の飼育頭数は、ピークの200万頭から減少はしているものの、現在は130万頭程度で推移しているそうです。この半世紀以上にわたる経済経営環境の変化のなかで、酪農業は規模を拡大し、徹底的に合理化と集約化を進めることで生き残ってきたと言えます。

しかしながら、その方向性は果たして正しかったのか、牛舎に牛を閉じ込めて高カロリー高栄養の人工飼料で、ブクブクと太らせた不健康な牛から限界を超えた乳量の搾乳を行う、まるで工業生産のように合理化された酪農業が、あるべき健全な酪農業と言えるのでしょうか。そういった疑問に対しての消費者の反応こそが、現在の牛乳離れ、乳製品市場の低迷につながっているように思います。今こそ、ミルクの本来の価値、おいしさ、栄養を見直し、これをきちんと具現化する酪農法である放牧酪農が見直されるべきであると考えます。

今日も一日頑張って行きましょう。

よろしくお願いします。

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