おはようございます。
今週末6日の東京イベントまであと2日です。200名のお客様が参加する大イベントになりますが、準備万端整えて、すべての皆様に喜んでいただける楽しい会になるよう、頑張りましょう。そして1週間後の15日には福岡のイベントも控えています。今日も東京は35度を超える猛暑日になる予報ですが、体調管理にもぜひ注意を怠らず、元気に張り切って参りましょう。
さて、話題は昨日のつづきです。我らが敬愛する野本亀久雄先生も、満88歳米寿を迎えられ、まだまだお元気ではいらっしゃいますが、すでに政府関係のお仕事や講演活動といった第一線からは退かれています。しかしながら、生体防御という学問をさらに一歩推し進めた、生活環境科学という新しい学問分野での研究活動に日夜勤しんでおられ、今も現役を貫いておられます。その野本先生がこれまで日本において医学、ライフサイエンスの分野において打ち立てられた業績、功績は語りつくせないものがありますが、特に私たちの日々の生活に大きな影響がある、医療の分野においては、野本教授でしか成しえなかった仕事がたくさんありました。先週から数回にわたってその代表的な例をご紹介してきましたが、最後は医療過誤の問題です。
医療過誤は、実は非常に難しい判断を求められるテーマであり、ルールや法律では管理しきれない大変専門的な知識や経験が求められる問題でもあります。単純に投薬の量を間違えたり、手術などの技量不足によるミスなど、医師や従事者がその責務を怠ったために起きる類の医療事故は、記録さえ残されていればその過誤については比較的判断は容易であり、すべての病院、医療機関では患者ごとに詳細な診療記録が義務づけられていますので、事故があれば患者も行政も記録の開示を求めることができます。しかし一方で判断が難しいのが、医師のプロフェッショナルオートノミー(個々の医師が診療に際して外部の第三者から影響を受けず、自律的に判断することができること)の問題です。
医療事故において患者が医師を訴えるケースが急増し、医療従事者にとって訴訟のリスクが非常に高くなり、大きな社会問題となりました。医療を提供する側も自己防衛のためとして、事前にさまざまな書類を患者に求めたりと、あまりに形式的な事務的雑務が増える一方で、患者本位の医療であったり、最適な医療の選択が阻害されるような事態も起きてきました。医師がが訴訟沙汰を恐れるあまり、リスク回避が優先され医療の選択肢が狭められるといった弊害が出てきたのです。結果として患者にとっても不利益な状況となり、だれも得しない事態に陥りました。
そこで野本先生の登場です。厚労省が窓口になり、医師が安心して患者にとって最適の治療を提供しながら、患者側も、もし不幸にも事故が起きた場合に、その事故において過誤があったのかどうかを公平、公正に判定する第三者があることで、やはり安心して治療を受けることができるように、新たなシステムを作ったのです。それが医療事故調査制度であり、現在の医療事故調査・支援センターの立ち上げでした。今では一般社団法人として日本の多くの医学系学会の協力を背景に立派な組織になりましたが、スタート時は、日本全国の病院、医療機関から、毎日患者の死亡事例がすべてセンターに集約される仕組みで、これを野本教授がほぼ一人で、過誤の有無を判断するという大きな責務を担っておられました。
全国の医師にとっては、野本先生が最終判断を下す、地獄の閻魔大王に見えていたかもしれません。しかし、専門家として責任と自信をもって医療行為に臨んでいる医師たちにとっては、不幸にして事故が起きても、きちんと正しい判断を下してくれる存在として、一方で安心感、信頼感もあったと言います。この制度とシステムができたおかげで、今日も私たちは医師を信頼し、安心して医療行為を受けることができますし、一方で医療側も、必要以上に患者に対して恐れを持つことなく、リスクはあっても最適な医療を提供できていると言えるのです。これも野本教授にしか成しえなかった仕事であり、行政に代わって野本先生がすべての責任を背負うことで実現した好例と考えています。
日本の医学界にとって、そして医療行政にとってもなくてはならない存在であった野本教授ですが、その野本先生が、「これしかない!これ以上のものはない!」と言い切ったのが、私たちのサステナです。その重みをかみしめて、私たちはこれからも自信をもってサステナの普及に努めてゆきましょう。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

コメント