おはようございます。
牛乳は西洋の飲み物だから日本人には合わないとか、牛乳が健康に良くないといった、根拠の不確かなうわさ話は、最近でこそあまり聞かなくなりましたが、一時は牛乳を敵視する医者なども現れ、マスコミも含めて社会現象になったことがありました。以前もこのお話を取り上げ、牛乳が栄養価の高い優れた食品であること、問題は牛乳ではなく、その製法や牛の飼育方法にあったこと、そして今ではそれらの問題も日本では行政によってしっかり管理され、安全性はもちろん老若男女の健康維持に必要な食品素材として、毎日の食卓に欠かせない存在になっています。
牛乳あるいはその加工品である乳製品が、どのように製造され、また食品としてどのような特長を持っているのか、知っているようで知らない部分もたくさんあると思いましたので、少し詳しく掘り下げてみたいと思います。
まず牛乳ですが、これは牛から搾乳されたミルクを意味し、牛乳以外にヤギや水牛のミルクなども一部食品として流通していますが、私たちが日々飲むといえば圧倒的に牛乳です。哺乳類はその名のとおり、母親のミルクで子供を育てます。人間ももちろん同じですが、牛乳もヤギの乳も母乳も、あるいは犬猫もミルク自体の成分は、ほとんど差がありません。基本的にはタンパク質と炭水化物、そして脂質にミネラルといった四大栄養素が水に溶けている、または浮遊している状態の液体です。タンパク質の一部や脂質は水に溶けないので、浮遊していると表現しましたが、均一に分散して浮遊している状態で、そのためミルクは白く白濁して見えるのです。油分が分離しているサラダドレッシングを振って混ぜると白濁するのと同じ理屈です。この分散している状態を乳化とも言います。
つまり牛乳には私たちが生きてゆくために必要な代表的栄養素がバランスよく含まれており、それが均一に分散した状態にある飲み物といえます。しかしあくまで分散しているだけなので、放置すれば脂質は分離し浮いてきます。牛乳の場合、この浮いてきた脂質を集めてバターを作っています。搾りたての牛乳は、半日もすると上部に脂質が分離してきます。この状態ではまだ白いのでクリームと呼ばれていますが、これがバターの原料になります。そして脂質を取り除いたミルクは、文字通り脱脂乳となります。多くのチーズはこの脱脂乳から発酵によって作られていますが、ヨーグルトの場合は脱脂乳ではなく、脱脂前の牛乳から作ることが多いようです。
ここで、チーズにしてもヨーグルトにしても、大切なのは発酵させているということです。そして発酵工程を担っているのが、さまざまな細菌なのです。代表的なものは乳酸菌ですが、その他にも多くの細菌が関わっており、多様な細菌がバラエティー豊かな乳製品を作っていると言えます。ただし、チーズの場合は乳酸菌だけでなく、タンパク質を固める作用をもつレンネットという酵素を加えています。この酵素によって牛乳のたんぱく質が固まり、チーズを作ります。そして乳酸菌などの菌が牛乳の炭水化物を食べてさまざまな物質を作り、味を形成しています。ヨーグルトの場合は、このたんぱく質を固める酵素がないので、乳酸菌などが作り出す酸性物質によってやはりタンパク質が変性し、固まらないまでもドロドロになります。つまりタンパク質を固める酵素を入れるか入れないかがチーズとヨーグルトの大きな差といえます。
牛乳のタンパク質は乳酸菌の発酵や酵素反応によって、分解したり性質を変化させます。固まったりドロドロになったりという変化が起こり、牛乳がチーズになったり、ヨーグルトになったりするということです。その際に性質を変化させているのが、牛乳にもっとも多く含まてれてるカゼインというたんぱく質です。これがチーズやヨーグルトの正体といってもいいかもしれません。牛乳に含まれる栄養素のおよそ3割がカゼインたんぱくとも言われていますが、非常に良質の動物性たんぱく質で、私たちの身体をつくる大切な栄養源になっています。
明日も、もうすこしミルクのサイエンスについてお話を続けたいとおもいます。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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