おはようございます。
先週から4回にわたってお話してきた生存環境科学ですが、今回が最終回となります。野本亀久雄九大名誉教授が提唱されている生存環境科学という学問分野は、いまだ未完結ではありますが、地球環境に暮らす生きとし生けるものはもちろん、空を流れる雲も、道端の石ころも、すべての存在が互いに関係を持ち影響しあうなかで、バランスを保ちながら私たちは生存しているという視点から、従来の生体防御学をさらに、自然環境、地球環境、そして宇宙までも対象としてとらえ直そうというアプローチなのです。そして宇宙の真理、原理を解き明かそうという試みは、もはや学問の域を超えて、まさに哲学・思想、あるいは信仰にも近い「道」なのだと、私は考えています。
私たちは、野本先生のもとで生体防御という理論をずっと学んできました。これはご存じのとおり過去からの免疫学という学問をベースに、ウィルスや細菌から高等動物まで、すべての生命がどのように関係し、影響しあって存在しているか、その共生関係、場合によっては食うか食われるかの敵対関係を保ちながら、全体を生態系として維持しているその仕組みを解明してきました。しかしそこには動物と植物、微生物と人間など、生命体同士の相互関係だけではなく、海洋や大気、そして気象などの無生物的要素、つまり生命体を取り巻く地球環境、自然環境についても、命をもつ存在と同等にその関係性を理解しておかなければ、生態系としての全体を把握し、理解することが難しい先生は仰います。
そこには生体防御学を、さらに一歩進めて無生物である地球環境や自然の営みを織り込んだ学問、つまり生存環境科学として考える必要があったのです。もちろん最終的なゴールは私たち人間が豊かでより良い社会に暮らすためのアプローチですから、人間の視点で良いのですが、いまや人間の無秩序な開発や経済活動によって、地球上の生態系のみならず、環境までもがまさに病んでいる状態に陥りつつあります。具体的には、新型コロナのようなパンデミックが引き起こされたり、異常気象による災害が世界中で発生したり、また宗教や思想の対立によって各地で紛争が勃発したりと、そこには生命を守る仕組みとしての生体防御論だけでは解決できない、さまざまな問題が次々に起きています。
そしてこれらの問題は、多くのケースで人間の無知や愚かさに起因する、無謀な行動や思惑、飽くなき欲望や独りよがりの感情によって、ますます混迷を深めていると言えます。私たち人間のみならず多くの生命、そして自然環境を脅かす様々な問題を、その本質の部分で理解することで初めて、おおもとの原因やあるいは要因を取り除くための対策が可能になると考えます。そのためのアプローチが生存環境科学なのですが、原則は生体防御論と全く同じです。私たちの暮らす地球環境、自然環境のしくみと原理、そして循環をきちんと理解し、これに抗うことなくあるべき姿を維持継続させながら、人間社会にも恩恵のある形で、賢く利用活用する術と知恵を磨くことであると考えています。そして最も大切なことは、私たち人間は常に未熟であり、全能ではないという謙虚さを持ち続けることであると思います。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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