NO.302 1月8日【木】=アレルギーの科学=

おはようございます。
本日のテーマはアレルギーです。いまや国民病ともともいわれるアレルギーですが、国立成育医療研究センター 免疫アレルギー・感染研究部 部長の森田英明先生らによる著書「アレルギーの科学」(講談社)が2025年10月に発刊されました。その内容は昨年ノーベル賞を受賞した坂口志文先生が発見された制御性T細胞(Tレグ)に関わる最新研究も網羅しながら、ようやく見えてきたアレルギー発症の「しくみ」、そして治療の「現在地」まで、日本のアレルギー研究を担う19人の専門家が丁寧に解説されています。科学に基づく「今知るべき知識」がしっかり詰め込まれた一冊ですが、そのなかからいくつか興味深いトピックスを抜粋してお届けしたいと思います。

まず、免疫やアレルギーの研究は、日本人研究者の活躍が際立つ分野の一つだということをご存じの方も多いと思います。なかでもアレルギーにとって最も重要といっても過言ではない「IgE抗体」の発見は、その後のアレルギー研究の基盤となっています。この発見は日本人研究者によるものですが、1966年、石坂公成氏、石坂照子氏(当時:米国小児喘息研究所)により世界で初めて発見されました。また、特筆すべきこととして、石坂氏らは発見し精製したIgE抗体を、競争相手や発見に懐疑的であった研究者も含め、分け隔てなく供与することで研究の推進を図り、これによってIgE抗体を介したアレルギー反応に関する知見は飛躍的に向上し、結果としてアレルギー疾患の診断や治療の大幅な進歩につながりました。このことからもわかるように、石坂氏らによるIgE抗体の発見は、アレルギー研究の歴史上、最も重要な発見の一つであるといえます

1960年代以降、日本でもアトピー性皮膚炎の患者数は急増し、厚生労働省の定点調査では2014年時点で約45万人との推定値がありますが、実際ははるかに多く、『アトピー性皮膚炎治療ガイドライン2008』によると、4ヵ月から6歳では12%前後、20〜30歳代で9%前後の頻度で認めることが明らかとなっており、実際のアトピー性皮膚炎患者数は数百万人にいたると考えられています。世界中では約2億3千万人いると推定されています。

アトピー性皮膚炎は典型的なアレルギー疾患で、外来抗原(アレルゲン)が体内に入ることによって発症します。アトピー性皮膚炎の主なアレルゲンは、花粉やホコリ、動物の毛などのタンパク質抗原です。皮膚バリアが堅牢(けんろう)であれば、こうしたアレルゲンの侵入をある程度防ぐことができるので、発症は予防できます。逆に、皮膚のバリア機能が低下すると、大量のアレルゲンの侵入を許してしまうため、アレルギー症状に陥りやすくなります。皮膚のバリア機能の低下にかかわる重大な科学的な発見が2006年になされました。この年、英国ダンディー大学のマクリーンらのグループが、フィラグリン遺伝子の変異が、アトピー性皮膚炎、あるいはアトピー性皮膚炎と喘息の合併症に関与することを示しました。

これまでアトピー性皮膚炎には遺伝的素因があることがわかっていましたが、遺伝子レベルの解明は遅れていました。アトピー性皮膚炎は、皮膚で起きるアレルギー疾患であるため、免疫応答やアレルギーにかかわる多数の遺伝子を標的とした探索が続けられてきましたが、その試みはことごとくうまくいきませんでした。マクリーンらは、この謎に包まれたアトピー性皮膚炎の原因遺伝子を発見することについに成功したのです。

アレルギー患者の大部分を占めるアトピー性皮膚炎についてお話ししてきましたが、もう一つ患者数が急増しているのがアレルギー性の鼻炎です。特に花粉症と言われ春先などシーズンになると発症するアレルギー症状ですが、こちらもその原因と治療法については、対症療法が中心で、なかなか完治が難しい疾患とされていますが、続きはまた明日お話したいと思います。

今日も一日頑張ってゆきましょう。                                    よろしくお願いします。

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