NO.296 12月19日【金】=ウイルスとワクチン②=

おはようございます。
新型コロナによるパンデミックを収束させた立役者ともいえる、mRNAワクチンですが、この画期的なワクチンの開発は2023年のノーベル生理学・医学賞の受賞理由にもなりました。昨日の復習ですが、このmRNAワクチンは、従来のワクチンと異なり、病原体由来の抗原を含んでいません。その代わり病原体の一部、例えば新型コロナの場合は、その殻を構成しているタンパク質(スパイクタンパク)の遺伝子情報(mRNA)を主成分としています。この遺伝子情報であるmRNAをワクチンとしてヒトの体内に入れることで、mRNAが細胞に入り、その遺伝子情報に基づいて細胞内で新型コロナウイルスのスパイクタンパクが作られます。そしてこれが抗原として認識されると、私たちのカラダの免疫システムが応答して、新型コロナに対する抗体をつくり出すという仕組みです。

このmRNAワクチンの仕組みは、先日来述べてきたインフルエンザウイルスや多くの病原性ウイルスの、ヒトを含めた生物への感染、増殖のプロセスと非常に酷似していることを昨日は指摘しました。ほとんどのウイルスの構造は遺伝子情報であるRNA(またはDNA)をタンパク質の殻で包んだ単純なものですが、mRNAワクチンもその名のとおりRNAという遺伝子情報を油脂の膜で包んだだけの単純構造です。これがヒトの体内に入り、その細胞を使って、RNAという設計図にかかれた目的物、ウイルスの場合はその分身、ワクチンの場合は病原体の一部のみを、どんどん複製してゆくという仕組みです。仕組みとしては、とてもシンプルですが、単純さゆえにとても似ていると感じるのは私だけでしょうか。

誤解を恐れず極論すれば、mRNAワクチンは、人間の手によって人工的につくられた疑似ウイルスと言えなくありません。ウイルスは生物にはあてはまらないが、生命活動をする生命体であるとお話しました。だとすれば、mRNAワクチンは人類がつくり出した初めての生命体と言えなくはないということになります。生命、つまり命の創造に人類が関わったとすれば、それは人間が神の領域に入ろうとする行為なのかも知れません。

新型コロナに対するmRNAワクチンの安全性は、正当なプロセスを経て確認され多くの国々で認可を受けて使用されてきました。また認可後も臨床データの追跡が行われており、一定の副作用や死亡に至った症例はあるものの、認可を取消したり、使用中止が議論されるようなレベルには至っていないようです。医療行為や医薬品には、望ましくない副作用が必ずあるというのが前提で、そのデメリットを上回るメリットがあるからこそ、医者という専門家の指導のもとで副作用に対策をしながら使用されているのが現実です。

しかし、ウイルスの進化のところでも述べた通り、ウイルスそのものは生物ではなくても、そこが起源となってDNAが作られ、そして多くの生物が誕生してきたと言う仮説に従えば、mRNAワクチンがウイルスと同様に頻繁に複製を繰り返すうち、その変異が積み重なればいつか新生物の進化につながらないという保証はありません。現状mRNAワクチンに使われている遺伝子情報は、私たちの体内では短い時間しか持続できずに分解されてしまうと言いますが、現在改良型のワクチンとして、遺伝子情報も含めて細胞内で複製されるレプリコンワクチンというものまで登場しています。つまり遺伝子情報もどんどん複製されるとなれば、もう疑似ウイルスというより、ウイルスそのものであり、そのコピーミス(突然変異)が起きる確率がさらに上がっているということになります。

もちろんこうした進化という概念、特に生物の進化となれば、人間の歴史、個人の一生に比べれば途方もなく長い時間の経過を要するものですから、私たちの生きている間にはmRNAワクチンが突然変異によって病原性のウイルスに変化し、さらにそこから予期しない新生物を生み出し、人間や他の生物の生存環境を破壊したり、なんていうことが起きることは無いでしょう。しかし何千万年、あるいは何億年後に振り返った時、あのmRNAワクチンが生命が織りなす広大な潮流の大きな分岐点になっていたということにならないとも限らないのではないでしょうか。そこはもうSFの世界かも知れませんが、可能性は否定できないということです。

AI人工知能、人工臓器、そして人工生命体、私たち人間の叡智は止まるところを知らず、まさに神の領域に近づいているのかも知れません。しかしひとりひとりの人間は、地震や気象といった自然環境の前では無力に等しいちっぽけな存在であることも忘れてはならないと思います。驕らず謙虚でいることを忘れしまっては、真の幸福は訪れないと思います。

きょうも一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

コメント

  1. ピンピンキラリ塩谷勇人 より:

    神の領域に人間が踏み込むと、しっぺ返しが来ると思います。

    人間は人間ができる最大限のことを進化し続ければ良いと思います。

    謙虚さを持って、神に敬意を持って人間のできる可能性に挑戦し続けたいものですね。