おはようございます。
昨日まで2回にわたって、ウイルスは生物ではないが生命活動を行う生命体と考えられること、そしてそのウイルスからDNAという遺伝子の本体に発展し、多くの生物の進化の起源になった可能性についてお話してきました。もちろんウイルスが起源という説はあくまで仮説であり証明されたわけではありませんが、そう考えると多くのことが説明できるというのも事実ですし、ウイルスとの共生のなかで人間をはじめすべての生物は何十億年もかけて進化してきたのは間違いないと考えます。
ウイルスの構造については、すでにお話したとおり核酸(DNAやRNA)とそれを包むタンパク質の殻だけという非常に単純なものですが、核酸が遺伝情報をもって他者の細胞内に侵入し、その細胞のリポソームという仕組みを利用してタンパク質などをつくり、自己を複製し増殖を繰り返すことで一気に数を増やします。その結果感染された生物は機能の障害を起こすケースも多く、まさに病原体として怖れられている理由になっています。この一見単純な構造と仕組みこそが、ウイルスの特徴である急速な変異を起こさせる原因で、複製による増殖が私たち生物と比べて圧倒的に頻繁にそして何回も繰り返されることで、当然ながら遺伝子の複製ミス(突然変異)も起こりやすくなり、これが変異種を生むメカニズムになっています。毎年のように新しい変異株が現れるインフルエンザや新型コロナは、ウイルスの進化の証明であり、多くの生物が何百万年かけてたどってきた道のりを、彼らはたった数カ月という短い期間で実現してしまう能力を持っていると言えます。
そして、話をワクチンのほうにすすめます。今回新型コロナによるパンデミックを人類は経験したわけですが、その過程において急遽実用化された新型のワクチン技術があります。2023年のノーベル生理学・医学賞を受賞したハンガリーのカタリン・カリコ教授らが開発したmRNAワクチンです。このワクチンの開発により、新型コロナの感染拡大は収束を迎えたといっても過言ではないと思います。そしてこのmRNAワクチンが画期的だったのは、従来のワクチンのように病原体の一部である抗原物質を含んでいないという点です。抗原の代わりに、抗原をつくる遺伝子情報(mRNA)を入れて作られたワクチンなのです。このワクチンを接種することで、mRNAが私たちのカラダの細胞に入り、そこで細胞の仕組みを利用して新型コロナウイルスの殻を形成しているタンパク質(スパイクタンパク)をつくり、これが抗原となって免疫反応を起こし、新型コロナウイルスに対する抗体をつくりだすという仕組みでした。
ここで、素人ながらある疑問がわいてきます。mRNAという遺伝子情報を油脂で作った膜に閉じ込めて作られた新型コロナワクチンと、RNAやDNAといった核酸をタンパクの殻につつんだ構造のウイルスは、じつは多くの共通点があるということです。構造はウイルスがタンパク質の殻であるのに対して、mRNAワクチンは油脂の膜を使っているので、成分は違いますが、相手となる細胞の中に、中身の遺伝子情報(RNAやDNA)を確実に送り届ける巧妙な器になっている点は全く共通しています。そして細胞の中に守備よく入り込んだ、中身のRNAやDNAは相手の細胞の仕組みを利用して、目的とするタンパク質をどんどん作り出してゆくという点も全く同じです。このmRNAワクチンの仕組みは、まさにウイルスのそれに酷似していることに気づきます。
このウイルスとmRNAワクチン、二つの共通点が何を意味するのか、明日もこの話題を検証してみたいと思います。
今日も一日頑張ってゆきましょう。
よろしくお願いします。

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