NO.293 12月16日【火】=ウイルスって生物?=

おはようございます。
今年は秋の味覚や紅葉をゆっくりと楽しむ間もなく、急速に厳しい冬に突入した感があります。すでに北海道や東北では冬の寒気団によって大雪がもたらされ、早すぎる冬将軍の到来に準備が間に合わないと言ったところもあようです。私たちの日常においても、今年はインフルエンザが例年より1カ月近く早い流行が観測されており、子供たちや高齢者に重症者も出ているようです。原因は新しい変異株が発生しているためといわれ、サブクレードKと呼ばれるいわゆるA香港型の系統に属する変異株です。日本をはじめ北半球に急速に広がっているようです。

新種の変異株であるためにワクチンが効きにくく、結果的に大流行を招いていると言います。これは新型コロナによるパンデミックも同じ理由であり、新種のものが発生すると、過去に感染の履歴がなく、いわゆる免疫が形成されていないので、簡単に感染してしまうというメカニズムです。

では、なぜインフルエンザや新型コロナは、毎年のように頻繁に新型が現れるのでしょうか。変異株というのは、新しい種類をつくって生存と繁栄を実現しているので、一種の進化といえます。そしてその進化が、とてつもなく早いスピードで起こっているのです。人間をはじめ多くの生物も進化の末にこうして地球上に繁栄を築いているわけですが、その進化は何百万年、何億年とかけて行われてきたわけで、インフルエンザや新型コロナのように半年や1年で起きるようなスケールでは考えられません。

この差が、じつはインフルエンザや新型コロナといったウイルスの特徴なのです。過去からウイルスは生物なのか、あるいはそうではないのかという議論があります。生物である条件として一般的には3つの条件が言われています。
1.細胞からできていること
2.自立して代謝をこなうこと
3.自立して自己複製をおこなうこと
これがいわば、生物の定義であると言います。しかし、これに照らしてみると、ウイルスは細胞からできておらず、自立して代謝も複製もできないことから、いずれの条件もみたさない、すなわち「生物ではない」とみなされてきました。

ウイルスの基本形は、核酸(DNAもしくはRNA)がタンパク質の殻で包み込まれているという、細胞に比べればきわめて単純なものです。そして、私たち人間のような生物の細胞に感染し、その細胞がもつリボソームという仕組みを使って自らのタンパク質をつくるという、強烈な細胞依存性を持っています。つまり他者のしくみを使って自分の子孫をつくっているというわけです。

この生物の定義には当てはまらない、でも遺伝子をもって自己複製し、増殖するという生命活動を行う生命体、それがウイルスなのです。ウイルスは、その個体数を考えれば、地球上の生命体の最大勢力であると言えます。たとえば、海の中のウイルスだけでも、地球上のすべての生物の個体数の10倍以上の数が存在していると考えられています。海水中にいる生命体のDNAを蛍光物質で標識すると、そのほとんどがウイルスの存在を示す、といわれているほどです。

このウイルスという生物とは言えない、でも生命活動をしている生命体は、私たち人間を含めた生物にとって、病気をもたらす悪者のように捉えられていますが、じつは人間を含めたさまざまな生物が、かくも多様にこの地球上に存在できているのは、何十億年にもわたるウイルスとの共生関係があったからなのだと言います。明日はそのあたりをもう少し詳しくお話したいと思います。

今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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