NO.287 12月4日【木】=ヒトは冬眠できるのか=

おはようございます。
現在日本の多くの地域で、クマによる被害が報告されており、死傷者数は196名(10月末時点)と過去最悪の記録を更新している状態です。本来ならもう冬眠に入っている時期ですが、夏が長くて気温がなかなか下がらなかったこと、木の実などの不作で、冬眠に備える食糧が充分でなかったこと、さらにクマの生活圏が市街地と接近することで、騒音や刺激で冬眠に入りにくい環境になっていることなどが影響していると言われています。12月に入り全国的には急速に気温が下降し、東北から日本海側には大雪に見舞われるところも出てきていますので、クマの出没もようやく落ち着いてくるのではと期待されますが、クマも充分な備えができないまま冬を迎えているのかも知れません。

さて、冬眠という行動は主に蛇やカエルといった爬虫類など、変温動物にみられる生態ですが、クマはれっきとしたほ乳類です。クマ以外にもリスやハムスター、コウモリ、キツネザル、ハリネズミといったほ乳類が冬眠をすることが知られていますが、では、同じほ乳類である人間はなぜ冬眠しないのでしょうか。冬眠という生態について調べてみましたので、ご紹介します。

ヘビやカエルなどの変温動物は、外気温の低下にともなって体温が下がることにより、活動できなくなります。しかし、鳥類や哺乳類は恒温動物であり、外気温のいかんによらず体温を37℃前後の狭い範囲に維持することで、生体機能を最適な状態で発揮できるように進化してきました。このことにより、鳥類や哺乳類が活動できる地域や時間帯は、飛躍的に拡大したといわれています。しかし体温は通常では外気温より高いため、熱は体からつねに放散されることになります。体内に熱を維持するには、多くのエネルギーと酸素が必要となるので、体温を一定に保つために、高いエネルギーコストを支払っているのです。寒冷や飢餓など、エネルギー源が枯渇する状況に直面した際、このことは生命維持に直結するデメリットになってきます。そこで、みずから体温・代謝を低下させてエネルギー不足に対応するという戦略をとる哺乳類が現れたと考えられます。この生理的な低代謝状態を「冬眠」とよんでいるのです。

冬眠中は、体温のみならず心拍数・呼吸数も致命的なレベルにまで低下し、それが長期間にわたります。全身の代謝が著しく下がるため、酸素消費量も大幅に低下すると言われています。そして体温は、通常であれば凍死するレベルまで下がります。にもかかわらず、冬眠中に動物の組織や機能が障害を起こすことはないのはなぜでしょうか。

ほ乳類などの恒温動物は、体温をほぼ一定に保つために、体温の「セットポイント」(設定温度)を定める機能を脳の視床下部にもっていると考えられています。しかし冬眠動物は、冬眠中にこの体温のセットポイントを大幅に低く設定できるのです。そのため、体温が著しく低下しても、新たに設定されたセットポイントに沿って機能調節がなされているのです。ホッキョクジリスなどの小型の動物は、冬眠時には体温は0℃に近いレベルにまで低下することが知られています。そんなに体温が下がったら、通常であれば組織障害が生じ、ひいては死に至るはずです。けれども冬眠動物は、こうした状況から、なんら障害をこうむることなく回復することができるのです。すなわち冬眠とは、体温制御システムの停止によって体温が低下しているのではなく、その制御範囲を能動的に低温側にシフトさせて引き起こされる低代謝状態であり、安全かつ効率的なエネルギー節約機構なのだと言えます。

では、人間も条件が整えば冬眠することは可能なのでしょうか。米国のNASAが真面目にそのテーマに取り組んでいると言います。2030年に人類を火星に送るプロジェクトが進んでおり、その一環として人工冬眠の研究が進められているのです。明日もこの続きをお話したいと思います。

今日も一日サステナ飲んで頑張りましょう。
よろしくお願いします。

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