NO.262 10月16日【木】=Tレグ(制御性T細胞)の話=

おはようございます。
今年ノーベル生理学・医学賞を受賞された大阪大学の坂口志文特任教授については、先日もお伝えしましたが、その受賞理由となった制御性T細胞(Tレグ)の発見は1995年のことであり、そこからすでに30年という年月が経過しています。それまでの免疫細胞に関する概念を覆すような大発見と言われていますが、現時点ではまだその発見による実社会での利用、応用が大きく進んでいるわけではありません。Tレグの存在自体は、免疫学や医学の教科書では当たり前のように解説され、免疫を制御する仕組みとして医学や薬学の分野では常識にはなっていますが、まだまだTレグ細胞の医療現場での活用は、これからと言われています。

2012年に同じくノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学山中伸弥教授らの発見したiPS細胞も、受賞から10年以上経過した現在、ようやく臨床での利用が始まりつつあるというのが現実です。それだけ、新しい技術革新があっても、これを人々の役に立つ形で実際に利用ができるところまで開発を進めるというのは、なかなか簡単なことではないということが分かります。特に人体を対象とした医療や健康での活用・利用というのは安全性の確認という大きな壁もあり、さらに難しい課題があると言えます。

では、具体的に現時点ではどこまでその利用が進んでいるのでしょうか。Tレグは免疫を抑えるブレーキとして働き、炎症や拒絶を抑制します。自己免疫疾患ではTレグを増やすこと、がんではTレグを抑えることが治療戦略となります。Tレグを「標的」にするか、「薬剤」として利用するかの両方向で、免疫が関わる様々な治療法開発が可能になると言われています。その研究は、自己免疫疾患やがんに加えて、臓器移植における拒絶の制御、アレルギー疾患、感染症、さらには神経難病など、多方面で応用が進んでいます。まだ実用に至ったものはありませんが、人類への貢献という意味でノーベル賞の受賞にふさわしいもので、大きな可能性を秘めているといえます。

ではTレグを用いた治療について、疾患領域ごとの最新動向を整理してみたいと思います。自己免疫疾患は最も臨床試験が進んでいる領域です。ポーランドのPolTREG社は、1型糖尿病患者に自己Tレグを継続して投与する試験で、病勢進行を遅らせる可能性を報告しています。また、低用量IL-2によってTレグのみを選択的に活性化する薬剤は、サノフィやアムジェンが開発しており、全身性エリテマトーデス(SLE)などで臨床試験中です。日本では中外製薬もIL-2改変分子に取り組み、アレルギー疾患への応用を目指しているそうです。

がん治療においては、Tレグは腫瘍内の免疫応答を抑えてしまうため、その除去により治療効果を高めることができます。免疫チェックポイント阻害薬の中には、ヤーボイなど、腫瘍局所でTレグを減少させる作用が示唆されているものもあります。さらに、腫瘍に浸潤するTレグを選択的に標的とする抗体や分子療法の開発も進みつつあります。一方そうした治療の副作用として生じる免疫関連有害事象があり、その制御には、Tレグを逆に利用する治療も検討されており、両刃の剣であるともいわれます。

まだまだあるTレグの利用応用ですが、続きはまた明日お話したいと思います。
今日も一日サステナ飲んでがんばりましょう。
よろしくお願いします。

コメント

  1. ピンピンキラリ塩谷勇人 より:

    Tレグの発見は、まさしくサステナの夜明けと思います。

    この考え方が、サステナをより理解していただける救世主だと思えます。

    もしかしたら、サステナが免疫暴走の時には、Tレグを活性化しているのかなとも、妄想してます。