NO.257 10月3日【金】=トランプ劇場は製薬業界へ=

おはようございます。

世界に混乱をもたらしているトランプ関税騒動がいまだ収まらない中、トランプ大統領の次のターゲットは米国内の高価格医薬品のコストを国外に転嫁しようとする政策です。第一期トランプ政権でも同様に薬価の引き下げを製薬企業に迫りましたが、前回は業界が裁判所に提訴し、阻止された経緯があります。今回は、ファイザーを始めグローバルに事業展開する17の製薬会社に対して、米国内の薬価を他の先進国水準まで引き下げるよう要求したといいますが、あくまで製薬会社への自主的対応を促すもので、政府が薬価引き下げを強制する法的権限を示したものではないとニューヨークタイムズは報じています。しかしながら、トランプ氏はもし製薬会社が動かなければ、米国の家庭を薬価の乱用から守るために、あらゆる手段を講じるつもりだと警告したといいます。

すでにおひざ元のファイザー社は、ブーラ代表がトランプ氏との直接のディールにより、米国内での一部医薬品の価格を平均50%値下げし、さらに米国内に700億ドルを投資し、研究開発と製造を強化すると約束したのです。一見トランプ氏の圧力に屈したように見えますが、このディールによるファイザーの株価は大きく上昇する結果となっています。薬価の値下げと米国内投資の引き換えに、ファイザーは100%という医薬品関税に対し3年間の猶予を得たうえ、トランプ政権の薬価政策によるさらなる打撃を回避できたことが評価されたと専門家は分析しています。

米国における医薬品の価格は、日本のそれよりもさらに複雑な仕組みで販売されており、今回のファイザーの50%値下げも、実態は定価で販売されているケースはほとんどなく、大半の人々が近所の薬局で保険証を使って、薬に関して負担する額は、それよりはるかに少ないといいます。昨年のバークレー・リサーチ・グループの調査によると、製薬会社は米国で販売する医薬品について、売り上げの約50%しか受け取っていない。残りの大半は薬剤給付管理会社に行くといいます。薬剤給付管理会社は、製薬会社からのリベートを使って保険料を抑制する仕組みになっているそうです。

また、処方薬に対して患者自身が負担する額は、米国の医療支出の1%に過ぎないというデータもあります。今回ファイザーが約束した50%値下げは、消費者に医薬品を直接販売するサイト「TrumpRx」を通じて実施されるとのことで、TrumpRxは、トランプ氏が薬価を引き下げていることを有権者に示すために設計された政治的なブランド戦略のようにも見えます。政治家が民間の市場や産業に干渉すると、おかしなことが起こります。医薬品の生産、政府承認、消費者のアクセスと価格に関して「医薬最高司令官」役を演じようとするドナルド・トランプ米大統領の継続的な試みは、この先いったい何処へ向かうのか、ある種恐ろしささえ感じてしまいます。

今日も一日サステナ飲んで頑張りましょう。

よろしくお願いします。

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