NO.212 6月27日【金】=お酒はなぜ20歳から?=

おはようございます。

お酒はなぜ20歳から?こうした問いにあなたは的確に応えられますか?なんだか、NHKの人気番組「チコちゃんに叱られる」のような問いかけになりましたが、果たしてこうしたルール、法律、基準が決められた本当の理由について、私たちは良く知らないままに、納得している、あるいは使っていることが日常にはたくさんあることに気づかされます。昨日お話した血糖値や高血圧の基準値、健康診断の報告書に、H(高)やL(低)という文字が増えた、減ったで一喜一憂したり、私たちは日常生活のなかで、こうしたたくさんの基準値に縛られて生きていると言っても過言ではありません。

話しを戻すと、日本では20歳未満の飲酒は未成年者飲酒禁止法で禁じられていますが、なぜ「20歳」という数字に決まったか、本当の理由を皆さんは的確に説明できるでしょうか。国税庁のウェブサイトなどには、20歳未満の飲酒は脳の機能を低下させる、臓器に障害を起こしやすい、性ホルモンに異常を起こしやすい、アルコール依存症になりやすい、といった理由が挙げられています。しかしこの説明では、なぜ18歳でも19歳でも21歳でもなく20歳なのか、という疑問は解消されません。なぜ20歳なのでしょうか?その理由は、1947年の青少年禁酒法案に関する参議院会議録に見ることができます。飲酒禁止を25歳未満にまで引き上げるべきだという発案に対し、当時の政府委員はこう答弁しています。

「年齢満二十歳以上の者は民法上も完全な能力者であり、公法上は選挙権を有し、国政に参与いたしておる者でありまして……」

つまり、20歳になれば自己責任がとれるなど、法律の面で自立する「成年」となるから、というわけです。すると、新たな疑問が湧いてきます。なぜ成年は20歳と定められたのでしょう?その根拠は、1876年(明治9年)の太政官布告にまでさかのぼります。当時、欧米諸国が21~25歳程度を成年年齢と定めていたのに対し、それらの国の文明・制度に学んでいた日本は、より若い年齢を成年としたのです。そしてその理由が大変面白いのです。欧米人と比べ、日本人が「精神的に成熟している」ことと、「平均寿命が短い」ことから、20歳が成年年齢として採用されたのでした。飲酒禁止が20歳未満となったのは、この数字が脈々と使われているからでありました。しかし、いまの日本人が欧米人よりも精神的に成熟しているといわれれば首をかしげたくなりますし、日本が世界に名だたる長寿国であることを考えれば、なんとも奇妙な気分になりますね。

お酒は20歳からという例で、その判断基準の根拠を見てきましたが、このように基準値には、きわめて科学的な方法で客観的に定められたものばかりではないということです。疫学データや動物実験、あるいは工学的実験などの科学的な知見や手法にもとづいて定められたものが多いのは事実ですが、そうした基準値にも、じつは主観的な推定と仮定の要素がきわめて大きく関与しています。いわゆる従来型の科学だけでは、基準値を決めることはできないということなのです。

さらに基準値の特徴として、もとの基準値がどのように算定されたかを十分に考慮せず、なんとなく数字を使いまわしてしまうということがよくあるといいます。基準値はいったん定められると、あたかもある種の「権威」のようになり、その根拠を深く考えることなく使ってしまいがちになるのです。ある基準値を使いまわして決められた基準値は、ときに十分な安全を確保しているとはいいがたかったり、まったく理屈に合っていなかったりします。当初の目的とはかけ離れた、ちぐはぐなものになってしまうことがあるのです。

日常、なんの疑問も持たずに使われているさまざまな基準値ですが、もうすこし深堀りして考えてみたいと思いますので、このお話来週も続けたいと思います。

今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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