おはようございます。
昨日からの続きです。トクホ(特定保健用食品)が制度化されスタートしたのは1991年でした。食品の第三の機能として生体調整という機能があることが、当時の文部省による特定研究で明らかにされ、これを国民の健康増進、ひいては健康寿命の延伸に活用しようというのが、トクホの理念でした。まさに国家プロジェクトとして始動したトクホでしたが、結局は医療業界・製薬業界などの強い反発にあい、制度としてスタートした時には当初の構想とはかけ離れた、肝心の部分が骨抜きにされた妥協の産物になってしまったのです。
医薬品と被るような効能効果は一切認められず、また身体の部位や具体的な疾病にも言及することが許されず、当該食品がどのように私たちの健康維持・疾病予防に役立つのか、なにも具体的に表現できないという、従来と何ら変わらないさらに大きな壁をまた作っただけの制度に成り下がってしまったのです。当時私は機能性食品懇話会という業界団体にも参加し、食品業界の立場からさまざまな意見、要望をまとめて行政に訴える側でお仕事をさせていただきましたが、やはり医師会や製薬業界が厚労省の薬務局などと結託して立ちはだかる壁は想像以上に高く堅固なものであったと記憶します。
結果的には、トクホは医薬品以上に厳しい審査項目が課せられ、これをクリアするには膨大なコストを要する臨床試験を繰り返さなければ認可されない非常にハードルの高い基準が設けられました。そしてそのハードルを運よく超えることができても、その結果として製品に許可される効果効能は、先に述べたとおり対象となる身体の部位や特定の疾病を具体的に表記できないので、なんだかよくわからない、消費者にとっては判断がしにくい表示しか許されなかったのです。まったく痒いところに手が届かない、行政と業界の既得権益を守る綱引きによって生まれた妥協の産物になってしまったのです。
野本教授は、こうした行政と業界の対応によって、本来あるべきトクホの概念、そして私たちの免疫ミルクの果たすべき役割がこの制度では生かすことができないばかりか、害される可能性も高いと判断され、トクホからの離脱を指示されました。医薬品や医療用品の中にも治療ではなく予防を目的とした製品はたくさんありますが、野本教授が一般の食品にこだわったのは理由があります。それは安全性と経済性でした。医薬品は効果が高いが必ず副作用があります。つまり素人が扱えないので、医師や薬剤師が介入しなければ利用できません。しかし食品は元来副作用がないというのが原則です。まず安全が担保されているので、素人が安全に自己判断で利用できるという点です。そしてもう一つは経済性です。食品であれば、医薬品に比べれば圧倒的に安価で利用でき、さらに医療保険を使わないので、社会保障制度に負担がかかりません。
しかし、トクホは医薬品と同等の臨床試験や、安全性試験を要求し、開発する企業には大きな投資を強います。さらに医薬品と違って圧倒的に長期に利用するため、安全性試験もその分非常に長期に実施する必要があるので、場合によっては医薬品以上にコストがかさむことになります。これでは野本教授が求めた経済性が全く損なわれてしまうことになります。まさに本末転倒の議論にトクホは陥ってしまったのです。免疫ミルクグループは早々とトクホを離脱し、野本教授が考える、誰もが安全にそして経済的に利用でき、しかもしっかりと国民の健康増進に資する効果、実力を備えた食品として、独自の道を歩むことになったのです。
これが当時の野本教授のご指導であり判断でしたが、その後トクホから2015年には機能性表示食品が制度化されます。経済的なハードルはやや下げられたものの、根本の思想は変っておらず、やはり私たちの免疫ミルクにはそぐわない制度であるというのが現在までの判断です。明日はその機能性表示食品についてもう少しこの話題を続けたいと思います。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。


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