NO.180 4月24日【木】=クスリと腸内フローラ=

おはようございます。
ここでも何度か話題として取り上げましたが、腸内フローラ(腸内細菌叢)は、食事や生活習慣、年齢や環境など、さまざまな外的内的刺激によってその組成が大きく変化することが分かっています。例えば食事であれば、その内容が食物繊維が少なく、脂質や糖質が多いといったケースや、生活においては仕事などでストレスがかると、体内に増加するホルモンや神経伝達物質などによって大きな影響を受けてしまいます。

近年、こうした腸内フローラの変化、組成に影響を与える要因を調べる研究が増えています。変化の原因を調査することで、より良い変化をもたらし腸内フローラをできるだけ良い状態に維持するには、どのような方法があるか、どのようなことを心掛ければよいかを明らかにするためです。腸内フローラの環境改善ができれば、すなわち多くの疾病の治療、予防、そして健康の維持増進に役立つということが多くの研究によって解明されているからです。

ところが、こうした研究によって大変ショッキングな事実も明らかになってきています。先日もポリファーマシーという問題(サステナ日記NO.176)でも取り上げましたが、高齢者のみならず日本人は世界でもクスリが大好きな民族と言われるくらい多種多様な薬を常用していると言われています。国民皆保険制度という世界でも稀な素晴らしい制度によって私たちの健康が守られている一方で、その負の側面として大量の薬剤が乱用に近い状態で処方され、国民医療費の高騰を招いているという事実があります。

このクスリ(経口に限らず注射などを含む)が腸内フローラの組成に最も強く影響をあたえているということが分かってきたのです。食事や運動などの生活習慣よりも3倍も強い影響だったそうです。そして2番目に強い影響を持つのが疾患、つまり病気でした。炎症性腸疾患、HIV感染、糖尿病、うつ病、慢性肝炎などの疾患によって、腸内フローラの組成が大きく変化することが分かってきました。

では、クスリの中でもどのような疾患に対する薬剤が大きな影響を及ぼすのでしょうか。解析の結果、消化器疾患治療薬、糖尿病治療薬、抗菌剤、抗血栓薬、循環器疾患治療薬、脳神経疾患治療薬、抗がん剤の順で、腸内フローラの組成に影響を与えていたそうです。想像通り生活習慣病に関わるクスリがずらっと勢ぞろいしている印象を受けます。

よくあるケースとして糖尿病と高血圧の合併症の場合、それぞれのクスリを複数同時に服用する場合もあります。そこで、投与されたクスリの数の多さが、腸内フローラにどのような影響を与えるかについても解析が行われています。その結果、同時に投与されたクスリの数が増加すればするほど、酪酸や酢酸といった短鎖脂肪酸を産生する菌種(善玉菌)が減少したと言います。一方で、投与するクスリの数を減らすことで、腸内フローラへの影響も減らすことができる、つまり腸内フローラの組成を回復させることができるということも分かったのです。

腸内フローラを良好な状態に保つことで健康の維持増進を図ることは、すべての人々にとって最善の健康法であることは疑問の余地がありません。健康寿命の延伸にも欠かせないとして国もこれを推奨しています。しかしその腸内環境の改善に最も大きな悪影響を与えているのが、クスリの副作用であることは非常に悩ましい問題です。もちろん医療にはクスリは欠かせませんし、クスリの処方や選択は素人が関与すべきではない専門分野ではあります。それゆえに、医師や薬剤師といった専門家がこうしたクスリの腸内フローラへの影響もふまえた上で、私たちの健康をともに守るシステムが必要であると痛感します。

今日も一日サステナ飲んでがんばりましょう。
よろしくお願いします。

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