おはようございます。
地方に住むほうが幸せになれると東京大学定量生命科学研究所の小林武彦教授は言います。小林先生の新刊「なぜヒトだけが幸せになれないのか 」(講談社現代新書)では、生物学の視点からヒトが生きる意味を問い直し、幸せに生きる方法について、そしてヒトの寿命について、大真面目に取り組んだ内容になっています。健康で幸せな社会を目指す私たちのサステナ活動にも大いに参考になる内容でしたので、ご紹介したいと思います。
まず、幸せのひとつの要件として寿命を延ばすには、個人としては、喫煙や暴飲暴食などはせず、健康的な暮らしをすることだと言います。そして社会としては、戦争をしないことはもちろんで、平均寿命を見ると先進国のほうが発展途上国に比べると20~30年寿命が長いので、先進国で暮らすことが大きい要素になります。先進国は栄養、医療、公衆衛生が総じて整っています。日本はどれをとっても最高レベルであり、平均寿命は世界トップレベルを20年以上キープしています。日本の国内状況を見てみると、寿命に影響を与える要因として、はっきりと相関が見られるのは、都市と地方です。
想像の通り地方のほうが長生きという統計データです。平均寿命は子供の割合など人口構成が違うと比べにくいので、100歳以上の人口比率で見ています。100歳以上では地方が都市のおおよそ2~3倍も違うと言います。トップ3は島根県、高知県、鹿児島県で、人口10万人当たり100歳以上が150人を超えていますが、ワースト3の埼玉県、愛知県、千葉県では、50人を下回っている結果です。地方に住んでいるほうが、都市部より100歳を超えられる確率が2~3倍高いということになります。東京、大阪、神奈川もワースト10には入っていますから、幸せを死からの距離が保てている状態と定義すると地方のほうがかなり「幸せ」と言えます。
長生きだけが「幸せ」ではないという考えもあります。また寿命が短くても都会暮らしがしたいというヒトもいます。しかし長生きなヒトは、通常健康である期間も長いわけで、健康的な生き方をしていたということになります。その割合が地方のほうが多いのです。ここで考えなければならないポイントが二つあると言います。一つは、なぜ地方のほうが長生きなのか。もう一つは、なぜ寿命が短い、つまり生物学的な「幸せ」が少ない都市部で暮らしたいのかです。後者は精神的な死からの距離とも関係していると言います。
日本の場合、都市部と地方で、医療や介護サービスの差は大きくありません。食べ物も、飲んでる水も、吸っている空気も、そこまで違いはないと言います。それでは何が寿命に影響を与えているのでしょうか。生物学的に考えれば答えは割と簡単で、それはストレスであると言います。それぞれのライフスタイルを比べてみれば、よくわかります。そのストレスを作り出す要因がまず住居で、地方のほうが3~4倍広いです。住宅の敷地面積で比較すると、東京、大阪は100~150平米ですが、トップの茨城、山形、岩手などは、平均で350~400平米となり、圧倒的に広さが違います。そして移動手段に代表される利便性の問題です。便利さはストレスを下げるメリットもありますが、運動量が減り特に高齢者では、退職後は全く家から出なくなる、出る必要もなくなることが問題になります。
そして最後はコミュニティです。都市部の人の付き合いは、会社などの仕事関係がほとんどです。そのため退職後は激減します。急に社会及び人との関わりが減るわけです。地方は古くからの地縁やお祭りなど地域の活動があります。また、農業ですと必ず地域で共同して管理するようなことがあります。農産物を農協に卸す作業も続きますので、社会や人との関わりが急激に減るということはありません。
このように寿命を縮める「ストレス」、つまり動き回れない、人とコミュニケーションを取れないというのは、人類の進化で確立した「幸せ」実現の行動パターンからはズレています。特に都市部ではその傾向が顕著で、その分ストレスが溜まりやすいと考えられます。サステナの目指す健康で幸せな社会は、健康寿命をただ延ばすだけでなく、同時に住環境やコミュニティについても一緒に解決してゆく取り組みが必要であり、サステナビレッジはそのモデルになればうれしいですね。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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