おはようございます。
いわゆる年収103万円の壁については、先週もお話してきましたが、ようやく来年度の経済対策のなかで、議論が本格的に進められることになりました。今後国会において所得税の問題のみならず社会保障費である健康保険料や年金保険料も合わせて議論されることを期待したいと思いますが、財源問題、さらに地方自治体の税収減対策など、課題も指摘されており簡単ではないようです。
そしてもう一つ50万円の壁という新しい壁が浮上しています。こちらは年収の壁というより、年金の壁というべきかも知れません。働く高齢者、65歳以上の就業者数は現在914万人と言われ、この数年過去最多を更新し続けています。年金を受給できる年齢になっても継続して働くというのが、当たり前の社会になりつつあるということだと思います。60歳で定年退職というかつての人生観はすでに過去のものとなり、年金制度もその支給開始時期を60歳から75歳まで、個人の事情により選択できるようになりました。もちろん開始を遅くすればそれだけ支給月額が増える仕組みとなっており、これは高齢者の働く意欲を後押しする制度として注目されています。
しかし、そこには大きな落とし穴があり、これが50万円の壁と言われる大きな壁です。65歳以上で給料をもらって働いている人が、ひと月の厚生年金と賃金の合計が50万円を超えた場合、その超えた分の半額が厚生年金から差し引かれるという制度があります。これが在職老齢年金制度と言われるもので、今年その壁が48万円から50万円に引き上げられましたが、働く高齢者のやる気を大いに削ぐ制度として非常に問題視されています。この制度がある限り、月収30万円以上になると厚生年金がカットされ、さらに月収50万円ではゼロになってしまうということです。
働けるうちは年金に頼らず、年金受給開始を最大75歳まで遅らせるという制度を活用して、できるだけ現役で頑張ろうと考えても、結局月収が50万円を超えてしまうと受給開始を遅らせて後の年金額を増やすということも適用されず、在職老齢年金制度によって支給停止の期間が延々と続くだけということになってしまいます。しかもその期間中も給与から年金保険料は徴収されるわけで、非常に理不尽なルールと言えます。
高齢者が働くほどに年金が減ってしまうという、在職老齢年金制度は「働くことに対してマイナス」のイメージしか抱かせない大きな矛盾を抱えた制度です。日本は人口が減少するフェーズにあり、今後さまざまな分野で労働力の不足が見込まれています。10年後の2035年には400万人の労働力が不足するとの予測もあり、その意味でも高齢者の継続就労は大きな社会課題です。歳をとっても元気で働ける、社会において現役を続けること、これが日本の目指すべき高齢社会であり、高齢化する世界にお手本として日本が示せる社会のスタイルであると思います。そのブレーキとなるような悪しき制度として在職老齢年金制度は、早期に撤廃をすべきであり、103万円問題と合わせて議論されることを期待しましょう。
今日も一日頑張って行きましょう。
よろしくお願いします。

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