NO.102 11月15日【金】=103万円の壁=

おはようございます。

先の衆議院総選挙で議席数を4倍に伸ばし、大躍進した国民民主党が掲げる選挙公約、年収の壁103万円を178万円まで引き上げるという法案が、具体的に与党自民党も巻き込んで国会で審議されることになりそうです。本法案の提案者である国民民主党党首の玉木雄一郎氏自身は、選挙後に発覚した不倫問題で、現在党の倫理委員会にかけられるなど急速に求心力を失いつつあるようですが、本法案自体はやはり躍進した国民民主党の数の力で与党との協力体制によって、実現する可能性が非常に高くなってきました。

では、具体的に103万円の壁が178万円に引き上げられると、どのくらい私たちの年収に影響があるんでしょうか。すこし検証してみたいと思います。まず年収の壁には、103万円以外にも106万円、130万円、150万円などいくつかの壁があると言われていますが、これは税金の問題だけでなく、社会保険料も年収の手取り額に影響するからです。簡単に整理すると、まず100万円以上で住民税がかかってきます。そして103万円からは住民税と所得税、さらに130万円からは社会保険料がかかるようになります。さらに150万円を超えると当人の収入ではなく、配偶者の収入に影響する配偶者特別控除が減額されて、世帯収入に影響が出ます。

今回の法案の骨子は、所得税の減額を目的としており、これを103万円から178万円に引き上げることで、所得税の基礎控除額が75万円分増えて、その分が減税になるということです。したがって年収178万円まで所得税はゼロですが、年収別に簡単に試算すると、年収200万円で約8万円の減税、年収400万円で約11万円、年収600万円で約15万円、年収1000万円で約23万円となり、当然ながら年収が高いほど減税額は大きくなります。

そして、最も肝心な103万円の壁を意識して労働時間を増やせない人達、つまり100万円~200万円の年収の方たちへの影響は、上記よりもさらに減税の実額は小さくなるので、本当に働く意欲の促進につながるのか、なかなか難しいのではと思います。さらに言えば、所得税だけを下げても、次の壁である130万円の壁、社会保険料の壁は存在し、絶対額での影響を考えれば、こちらのほうがより高い壁として存在していることも考慮に入れなければならないと思います。年収が130万円を超えると税金以外に、健康保険料と年金保険料の支払義務が生じます。自治体によって差はありますが、国民健康保険と国民年金を合わせると、おおよそですが年間30万円程度の負担になり、こちらのほうが税金よりずっと大きいことが分かります。

103万円の壁として、所得税の基礎控除を大幅に引き上げようという今回の法案は、低所得層にスポットを当て、その壁を取り払うことで収入の底上げを狙っているように喧伝されていますが、社会保険料なども含めて総合的に考えないと実効性はあまり期待できないのではという疑問が残ります。さらに言えば、この所得税減税案は年収金額に関係なくすべての人々に影響し、減税の実額で見ると収入の多いほうが金額が大きくなる仕組みなので、国と地方の税収額に及ぼす影響は、7.6兆円にも上る税収減となるため、これを歳入の柱として運営している地方自治体にとっては、大変大きなインパクトになり、すでに多くの自治体が住民サービスの低下につながるとして、大反対をしています。

ばら撒きと揶揄されても仕方ないこの法案ですが、本当に生活に困窮している人々に手を差し伸べるのであれば、もっとピンポイントに効率よく資金を投下する方法があるのではと思うのですが、一方で国の一般会計における税収は、過去15年で38兆円から70兆円にまで増えており、この間国民の平均年収が全く増えていなかったことを考えれば、これくらいの減税をしてもまだおつりがあるのではとも考えます。

いずれにせよ、もっと国民にもわかりやすいよう、そして納得がいくようにしっかりと国会の場で議論して頂き、真に国民のためになる政策として実施して頂きたいですね。

今日も一日サステナ飲んで頑張りましょう。

よろしくお願いします。

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