No.33 7月3日【水】=院内感染と医療過誤=

おはようございます。

これまで野本亀久雄名誉教授との出会いから、日本の医学医療における先生の功績についてお話してきましたが、ご自身でもIQ200以上と豪語される通り、やはり俗にいう天才のお一人であり、その頭脳はまさに日本の宝ともいうべき存在です。しかし野本先生の魅力はそのずば抜けた知能もさることながら、あれだけのお弟子さんたちを指導し、産学官の垣根を越えて多くの人々が野本先生を師と仰ぎ、有志をもって結集し、生体防御学をベースに、私たちの社会と健康に大きな恩恵をもたらすに至ったのは、その人間としての大きさ、包容力と、そして厳しい中にも最後まで面倒を見てくれるという優しさ、絶対的な信頼があったからだと思います。それはすべてのお弟子さんたちや、先生にかかわった多くの人々が異口同音に口にする点であり、まさに最高のリーダーたる所以であったと思います。

さて、今日は院内感染と医療過誤という、医療の現場においては永遠のテーマについてお話したいと思います。まず院内感染という言葉がメディアを騒がせ、一般人の私たちも耳にするようになったのは、2010年のことでした。帝京大学付属病院において、27名の患者が感染症により死亡するというショッキングなニュースが流れたのです。そしてその後も各地の総合病院、大学病院など大型の医療施設で、院内感染による死亡例が相次ぎ大きな社会問題となりました。原因は、抗生物質が効かない多剤耐性菌という病原細菌の感染が拡大したことでした。新型コロナはウイルスですが、多剤耐性菌というのは、抗生物質の多用によって耐性をもつ新たな細菌が生まれ、これが病院内の免疫力の弱っている患者さんに感染が広がり、命を奪う結果になったと言われています。

院内感染を起こした代表的な多剤耐性菌としてMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)というのが、接触感染、飛沫感染によって広がったと言われています。黄色ブドウ球菌自体は、健康な人の皮膚や鼻腔にも常在する細菌の一種で、通常は傷口に侵入したりしない限りは簡単には感染しないのですが、抵抗力、免疫力が低下している入院患者、特に手術後などは、感染するとさまざまな二次疾患の原因になります。いわゆる日和見感染症の原因になると考えられています。

感染症対策は、生体防御医学の基本ですから、厚労省はすぐに野本教授に出動を要請することになりました。大学病院も私立病院も、いわゆる白い巨塔と呼ばれる世界は独自の権力構造もあり、なかなか官主導では指示命令が行き届かないのだろうと思います。しかし、事態は多くの患者の命に直結しており、病を治す場所である病院で、新たな感染症が発生しバタバタと人が死んでゆくという未曽有の状況に、猶予はありませんでした。野本教授は、野本軍団とそのお弟子さんたちを動員し、全国のすべての中核病院に対して、衛生環境の実態調査と改善のための指針を打ち出し、独自の院内感染対策マニュアルを指導作成し、現場の管理を徹底させたのです。

これにより、院内感染による大きな事故はほぼ終息を見るに至ります。もちろん新たな感染症は常に私たちを脅かしており、その後もさまざまな細菌やウイルスによる感染症が流行しますが、病院や医療施設においては、感染対策が徹底されているので、病院内で他の患者に感染が拡大することはほぼなくなっています。今回の新型コロナも、日本の病院は感染対策が徹底されていたおかげで、他の諸外国に比べても非常に死亡例が少なく、医療施設内の感染拡大も最小限に抑えられていたことは、十年以上前に院内感染問題に取り組まれた野本教授の功績のおかげなのだとつくづく思います。

医療過誤のお話まで今日はたどり着けませんでしたので、これはまた明日にしましょう。

今日も一日頑張って行きましょう。

よろしくお願いします。

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